地域情報ブログ

宮城企業2023.05.19

青葉山に建設中の「次世代放射光施設 ナノテラス」って何?

こんにちは。リージョナルキャリア宮城のコンサルタント、佐藤です。

現在、東北大学青葉山新キャンパス内に次世代放射光施設「ナノテラス」が建設されたのをご存じでしょうか?2023年3月に竣工し、2024年度はに本格運用開始予定で、3月18日には一般公開もされました。

G7仙台科学技術大臣会合で視察が行われたため、ニュース等で目にした方もいらっしゃると思います。

nanoterasu_1.jpg

(画像出典:Nano Terasu公式サイト)

多くの人がこの施設について詳しく知らないかもしれません。私もその一人です。

東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターとナノテラスのホームページでは、詳しい解説がありますが、専門用語が並んでいて少し難解です......。

そこで、文系の私が以下のサイトを参考にしながら、素人ながらにまとめてみました。この記事を通じて、ナノテラスについての理解が少しでも深まれば嬉しいです。

<参考>

NanoTerasu公式サイト(最終閲覧日:2023年5月19日)

東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(最終閲覧日:2023年5月19日)

次世代放射光施設とは?

次世代放射光施設を一言で言うと「ナノまで見える巨大な顕微鏡」です。

物質を原子レベルまではっきりと見ることができる最先端の顕微鏡です。ナノメートル(100万分の1ミリ)級の超微細な世界を可視化できます!(ちなみに、分子の大きさは10ナノメートル、原子の大きさは0.1ナノメートルです)

放射光施設は世界に50箇所あり、そのうち日本には9箇所あります。国内最大規模の放射光施設は、兵庫県にある「SPRING8」です。

放射光とは?

電子加速器が生み出す、高輝度で高指向性のX線などの電磁波のことを「放射光」といいます。輝度とは明るさのことで、輝度が高いと、様々なものをよりくっきりと、より短時間で、より微小な領域を、より詳細に観察できます。

X線には「軟X線」と「硬X線」の2種類があり、エネルギーの大きさが異なります。ナノテラスは「軟X線」を使った放射光施設です。

ちなみに兵庫県のSPRING8は硬X線を使用しており、硬X線領域では世界トップクラスの性能を持っています。

軟X線では2010年以降、日本と海外とを比較すると実に100倍近くの性能差が付いていました。しかし、ナノテラスの放射光は太陽の10億倍の明るさを持ち、コヒーレンス(光の波の形のそろい具合)が100倍近くになるということで、これにより海外の施設と比べて性能差を一気に逆転することができるということです。

nanoterasu_2.jpg

(画像出典:経済産業省東北経済産業局「次世代放射光施設と見え方専門家集団

加速器とは?

電子や陽子などの粒子を、電場を使って加速する装置を「加速器」といいます。これらの粒子を光の速度に近づけるまで加速します。

加速器にはさまざまな種類と用途があります。

【代表的な加速器の種類】

・コッククロフトウオルトン型加速器

・バンデグラーフ型加速器

・サイクロトロン

・ベータトロン

・シンクロトロン

・線形加速器

ナノテラスはシンクロトロン加速器です。

加速器により、さまざまな研究が行われてきました。ノーベル賞につながった研究もあります。例えば、2008年のノーベル物理学賞の「小林・益川理論」は茨城県のKEKBでの検証が決定打となりました。

東北大学にはナノテラス以外にも、電子光理学研究センター(線形加速器、シンクロトロン)、東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター(サイクロトロン)と、既に運用されている加速器施設があります。

そのほか、岩手県が建設候補地として上がっている、49の国と地域の300以上の大学や研究所の科学者やエンジニア2,400人以上が参加するILC(国際リニアコライダー)も、次世代の直線型衝突加速器です。

また、がんの検査で使われるPETや重粒子線治療でも加速器が使われています

どんな原理?

加速器に搭載されている電子銃と呼ばれる装置から電子が発射されます。この電子は電気の力(電場)を使って光とほぼ同じ速度まで加速されます。

電子の進路は磁石によって曲げることができます。光の速さに近い速度で進んでいる電子が曲げられると、一部のエネルギーが取り除かれ、真っすぐで明るい光が放射されます。これが放射光(シンクロトロン光)です。

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(画像出典:東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターHP)

この放射光を調べたい「対象物」に当てます。対象物に当たった後の光は、「検出器」と呼ばれるセンサーのような装置で読み取り、コンピュータで画像に変換されます。

規模はどのくらい?

ナノテラスには1周350メートルの装置があり、直径は約100メートルです。28本のビームライン(実験室)を整備することができます。

運用開始までには、10本のビームラインを整備する予定です。

どのように利用されるの?

ナノテラスは軟X線を使用しており、材料の表面や反応を観察するのに適しています。

先ほどの10本のビームラインのうち、3本は世界最高性能で自然科学の最先端の研究に利用されます。残りの7本は、さまざまな物質の機能を可視化するために使用されます。

具体的にどのような用途があるか?

放射光は、食品、資源・エネルギー、化粧品、自動車、金属加工、医薬品など、さまざまな産業分野で利用されています。これによって生まれた製品が私たちの日常生活を豊かにしています。

例えば、感染症対策ではワクチンの開発において、細胞内でワクチンがどのように機能するかを可視化することができます。感染症に対する対策を迅速に進めることができます。

サイエンスパークとは?

ナノテラスに隣接する約4万平方メートルの区域に「サイエンスパーク」の整備が進められています。これは企業や大学、地域の人々が集まる研究開発拠点となる予定です。

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(画像出典:東北大学産学連携機構「NanoTerasuとサイエンスパーク

ナノテラスが来年から稼働を開始すると、研究機関や企業の研究者が多く集まることになります。ここでの研究成果を基に、未来の私たちの生活をより便利にする様々な製品が生まれるでしょう。

このような素晴らしい施設が来年から本格的に稼働することは非常に楽しみですね。

以上が、次世代放射光施設「ナノテラス」についての概要です。ナノテラスはナノメートルスケールの世界を観察し、材料や反応の理解を深めるための重要なツールとなるでしょう。

加速器と放射光を利用した先端技術の進展により、私たちの生活や産業のさまざまな分野に新たな可能性が生まれることを期待します!


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佐藤 理貴

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