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時代を読み解き、決済ビジネスの可能性を広げる。

ウェルネット株式会社
代表取締役社長 宮澤 一洋

北海道 更新日:2020年6月03日

1960年、長野県生まれ。1983年、明治大学政治経済学部卒業。1996年に株式会社一髙たかはし(現・いちたかガスワン)へ新規事業開発担当として入社。事業開発子会社(ウェルネット株式会社)へ異動、事業開発担当取締役就任。2009 年に代表取締役社長就任(現任)。
※所属・役職等は取材時点のものです。

35歳で着手した新規事業・コンビニ決済。

大学卒業後、私はガスや電気のメーターメーカーに就職し、全国を営業で駆け回っていました。そこで知り合ったのが北海道のガス会社「一高たかはし(現・いちたかガスワン)」の社長です。全国から注目されるチャレンジ精神旺盛な先駆的な経営者でした。そんな社長と次世代のシステム開発を協働するなかで、「うちで何か新しいことをやってみないか」と誘われ、新規事業の立ち上げ要員として入社しました。

世の中は「Windows95」が発売され、インターネットの黎明期。インターネットの普及で世の中が大きく変わろうとしている時期でした。私が35歳くらいの時でしたから、新しいことをやりたいという野心はありました。

そこでまず考えたのは、私ひとりでできること、そして資金がかからないことでした。これからEC(電子商取引)が増えていくだろうという状況でしたので、コンビニ決済に目をつけ、パッケージソフトを作り、インターネットで無償配布。その後もビジネスのすべてはインターネット上で行いました。

ネット社会がまだ小さかったことと、ビジネス雑誌に取り上げられたこともあり、すぐに利用件数が増え、コンビニ決済というサービスがあっという間に世の中に広まりました。

電力・ガス、バスなどの生活インフラにフィンテック。

これまで取り組んできたコンビニでの現金決済から、今後はフィンテック(FinTech = Finance+Technology)の時代になりつつあります。当社では、2017年8月から関西電力で新しいサービスを開始しました。スマホのアプリで、銀行口座からチャージした電子マネーを使い、紙や現金を使わずに支払いができる機能です。その後、他電力やガス、公共交通などの生活インフラの各種支払いにも汎用させています。

スマホのアプリを使った新しいサービスとしては、高速バスの予約や決済ができる「バスもり!」があります。バス会社にとって自社でシステムを開発するのはコスト的にハードルが高い。ならば、当社が開発したプラットフォームを運用して、使った分だけ手数料としていただきます、というサービスを提供しました。コンビニ決済のしくみとまったく同じ発想です。

ペーパーレス化、キャッシュレス化の波が、追い風となる。

世の中はデジタル化に向けて時計の針が急速に回り始めています。5Gの超高速のネット環境やAIの導入、さらに規制緩和により遠隔診療や薬の通信販売が可能になりつつあります。ペーパーレス、キャッシュレス、リモートワークがこれまで以上のスピードで普及しています。

この変化に満ちた時代の流れは、私が創業した90年代と非常に似ています。しかし当時と違うのは、私たちには戦える武器があるということです。時代を読み解き、その先をいくサービスに着目し、開発してきた当社。自分たちのアイデアを自分たちのお金を使って開発し、自分たちで運用していく。この立ち位置こそが、これからも変わらぬ戦略です。

膨大な決済マーケットで、ビジネスチャンスを広げる。

決済ビジネスのマーケットは膨大です。なぜならば、すべての取引経済には必ず決済がついてまわるからです。そして決済は、なくなることがありません。私たちが狙っているのは決済ゲートウェイ。要するに、決済ゲートウェイサーバーのポジションをクラウド的に、ワンストップで提供することです。

根本的な考え方は、これまでと変わりません。システム開発費はいただきません。利用企業からは決済毎に費用をいただき、銀行などパートナーとは「そこで得られた収益をシェアして、一緒にビジネスを進めていきましょう!」というモデルです。

  さらにチャンス拡大の鍵となるのは、都会ではなく、むしろ地方。トラフィックがない地方でも、だれもがユニバーサルサービスを受けられ、IT化によってより便利に且つコストダウンできるのが私たちの提供しているプラットフォームなのです。人がいる限り必要となる電力やガス、公共交通。それらの生活インフラのフィンテックを地銀と一緒になって推し進めていくことが、私たちの目指す方向性です。

高専生への支援を通して、北海道に貢献。

私は、ゆっくりと時間が流れる北海道が大好きで、スキームのすべては北海道で発想しています。研究開発分野においても、北海道の大学やベンチャー企業との連携を大切にしています。社内のみならず、外部に対しても一生懸命チャレンジする人たちを支援したいと思っているからです。

さらに若い人材への支援でいうと、道内の高専生のために奨学基金を創設しました。きっかけは、採用活動で高専を訪問したときに、経済的に困窮してドロップアウトする学生がいることを知ったからです。この奨学基金は返済不要です。人数枠も決めていません。経済的に苦労している将来有望な学生をもっと支援していきたいと考えています。高専生から届いたお礼の手紙は社員にも紹介する読む機会を作っています。涙腺が緩んでしまうものもあり、当社が人助けをできているという意味で社員のモチベーション高揚にもつながっているようです。

変化はチャンス!挑戦する人が集まる会社へ。

会社の財産は人です。人がサービスをつくります。会社側の課題は、発想、開発、営業、運用などにおいてアイデアを出し、実践できるメインプレイヤーをどれだけ育てられるかに尽きます。一つの手段として、より楽しく働ける環境の実現を考え、札幌事業所の新社屋建築を構想し、2021年に完成します。若いエンジニアが働きたいと思えるオフィスデザイン、できるだけ壁を排除し、一つ屋根の下でコミュニケーションが取れる環境。さらに健全な職場環境を実現するために「WELL認証(※)」の最高ランク・プラチナ取得をめざしています。

私は「人生とはチャレンジのステージ」だと思っていますので、挑戦できるフィールドを提供することを経営コンセプトとしています。自分の可能性を試すフィールドとチャンスは、惜しみなく提供します。そして変化をチャンスととらえて、新しいものを獲得しようとするポジティブな人間に共感します。これからは若い人の発想が大事になってきます。夢を抱いて新しい世界を一緒に作っていきましょう。

※2014年に米国で開発された、働く人々の健康やウェルネス、快適性を保証するオフィスに与えられる認証。

編集後記

コンサルタント
荻野 智史

「会社の財産は人である」と、社長は言い切ります。東京での最新ビルへの移転、札幌でも最新鋭の新社屋建築という大型投資に踏み切ったのも社員のためであり、社員のための投資やチャレンジできるフィールドの提供にはリソースを惜しまないのが同社のポリシーです。

フィンテック時代の中で「決済ビジネスの拡充を中心としながら生活インフラとなるIT化を推進することで、首都圏のみならず地方への貢献を果たしたい」と熱く語る社長の目に、社長の志と夢を感じました。これまでに独自の市場を切り拓いてきた同社の今後の更なる成長がとても楽しみです。

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