北國から始まる人材革命で、企業と地域が共に輝く未来を創る。
株式会社北國フィナンシャルホールディングス
執行役員・人材開発部長 井上 純子
石川県生まれ、東京女子大学卒業、株式会社北國銀行入社。
2021年 コンプライアンスグループ長就任。
2023年 株式会社北國フィナンシャルホールディングス カスタマーサービス部に執行役員として就任。
2025年 人材開発部長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
輪島から東京へ、そして石川への回帰ではじまったキャリア。
私は石川県輪島市で生まれ育ち、高校卒業後は東京女子大学へ進学。東京に残って就職しようと考えていましたが、大学4年生の教育実習で石川県に戻ってきた際、金沢の路線バスで乗客の多くが運転手に「ありがとう」と声をかけて降車する光景を目にします。
石川の人たちが持つ優しさや温かさに改めて触れたことで、「この地域で働くのもいいかもしれない」と思うようになったのです。地元に戻るという選択は安心感だけでなく、自分自身の価値観を見つめ直すきっかけにもなりました。
金融業界を志した背景には、銀行員だった母の影響があります。お客さまと丁寧に向き合い、豊富な情報を活かして仕事を通してお客さまの役に立とうとする姿を見て育ち、「銀行の仕事は人の人生に寄り添うもの」と感じ、自然と金融業界への関心が高まっていきました。
北國銀行に入社後は、営業店にて個人法人のお客さまに対する融資業務やコンサルティング営業を経験しました。結婚・出産・育児といったライフイベントを経ながらキャリアを継続する過程で、時に立ち止まりそうになることもありました。しかし、その都度、上司や同僚の支えに助けられて今に至っています。
コンプライアンス部門への配属が人生の転機に。
営業部門を歩んできた私にとって、2021年のコンプライアンスグループ長への異動は大きな転機でした。
まったく異なる分野への抜擢に戸惑いもありましたが、当時は会社全体が変革期にあり、女性の新たなキャリアパスを切り拓くという明確なメッセージだと感じました。
この異動を「チャンス」と捉え、未知の領域に前向きに取り組んだ2年間は、リーダーシップや経営視点を深める貴重な経験となりました。ホールディングス化のタイミングとも重なり、内部統制やリスク管理など、経営に直結する判断を求められる場面も多く、視座が高まったと感じています。
その後は、120人規模のカスタマーサービス部門で執行役員を務め、AIのシステムを活用したコールセンターの業務改善やお客さまの声を活かす仕組みづくりに注力した後、2025年3月に人材開発部長に着任しました。
現在は事業戦略に基づいた人材育成や配置など、人材戦略の策定と実現に取り組んでいます。
「全員が銀行員を辞める」大胆な組織変革と評価制度の刷新。
当社では2025年10月に社名を「株式会社CCIグループ」へと変更します。それに合わせて、当社では「2ブランド」を採用し、北國銀行とCCIグループの2つのブランドで事業を展開しています。
銀行業務のほか、コンサルティング業、投資ファンド事業、自社開発システムの他の金融機関への販売といったデジタル分野の展開にも力を入れており、2030年には銀行業務と非銀行業務の経常収益比率を50:50にするという目標を掲げています。
これは決して簡単ではありません。この目標を実現するためには、従来とはまったく異なる視点での人材配置と育成が不可欠です。また、従来のように、新卒で入社した社員を年功序列で昇進させていく仕組みでは、これからの時代には対応できないと考えています。
当社は2021年のホールディングス体制への移行に伴い、「全員が一度銀行員を退職し、フィナンシャルホールディングスに所属した上で、各事業部へ出向する」という制度変更を実施しました。
これは単なる組織図の変更ではなく、銀行中心の発想から脱却し、多様な事業展開を可能にする新しい組織への転換を象徴するものであり、社員一人ひとりへの強いメッセージでもありました。
同時に年功序列制度の完全廃止にも踏み切りました。新たに導入した「キャリア型人事制度」では、年齢や勤続年数ではなく、スキル・役割・生産性・貢献度の4つを評価軸としています。社員と会社が対等な関係で、「自分のキャリアは自分で考える」そんな自律性を重視した制度設計です。
もちろん、この変革は一度で完成するものではありません。制度導入から2年が経ち、現在はエキスパート職の新設や、市場との連動性を高めた評価制度の検討など、改善の議論を重ねています。
中にはさまざまな意見を持つ社員もいますが、直属の上司や私たち人事部門が丁寧に対話を重ね、理解を深めてもらえるよう努めています。変革には時間がかかりますが、粘り強く、そして着実に進めていきたいと考えています。
自律的なキャリア形成と対話を軸にした組織づくり。
当社では、社員一人ひとりの成長とキャリア自律を支えるために、学び続ける風土の醸成と対話を重視した職場環境づくりに力を入れています。
人材育成においては、リカレント教育やリスキリングを積極的に推進しており、2025年7月時点で社内にはMBA取得者・学習者が約80名在籍しています。会社はその学費の3分の2を支援しており、私自身も現在MBAを学習中です。
こうした学びを全社的に推奨している背景には、変化の激しい時代において社員が自ら考え、構想する力を養うことが不可欠だという考えがあります。これは私の信念であると同時に、当ホールディングス全体の理念にも根ざしています。
さらに、社員のキャリア形成を支援するため、社内には11名のキャリアコンサルタント資格を持つキャリアサポートメンバーが在籍しており、希望に応じてキャリア面談を実施しています。
自分の価値観に向き合うきっかけを提供し、行動の後押しをすることを目的としており、時には転職という選択をする社員もいますが、それもまた自律的なキャリア形成の一環と捉えています。
また、組織風土の面では、CEOの「対話を重視し、組織として議論を活性化させたい」という想いのもと、本社の役員室フロアをオープンな執務スペースへと刷新しました。
社内各所には自然とディスカッションが生まれる空間が設けられ、部署や役職の垣根を越えたコミュニケーションが日常的に行われています。
新入社員やキャリア採用者の入社時には、入社式に代わる「ウェルカムミーティング」を開催。4階のカフェスペースで、CEOと新たな仲間たちがQ&Aやディスカッションを通じて交流する場を設けており、企業理念やビジョンへの理解を深める貴重な機会となっています。
このように、当社では「学び」と「対話」を軸に、社員の自律的な成長と組織の活性化を両立させる取り組みを進めています。
キャリア採用70%の実績を根底から支える、対話重視の採用戦略。
対話を重視する企業文化は採用においても定着しています。当社では現在採用全体の約6〜7割をキャリア採用が占めており、最近ではデジタル部門やシステム部門、投資部門など幅広い職種に参画し、プロフェッショナル人材として活躍しています。
これは地方金融機関としては非常に珍しい実績といえますが、その背景には、Uターン・移住人材の獲得を目的とした積極的な採用戦略があります。
18歳で大学進学とともに地域を離れた人材が経験を積み、専門スキルを身に付け、30代になり結婚や子育てを機に故郷を思い出す。そんなタイミングで私たちを選んでもらえるよう、首都圏での情報発信にも力を入れています。
採用において私たちが最も重視しているのは、インテグリティ、リカレントマインド、そして企業理念・ブランド理念への共感です。どれほど高いスキルを持っていても、地域の課題解決や価値向上に共感できなければ共に働くことは難しいと考えています。
面接では表面的なやりとりにとどまらず、深い対話を心がけています。「なぜそう思うのか」「その考えに至った経験は何か」といった問いを通じて、候補者の価値観や背景を丁寧に掘り下げていきます。時には「お子さんの頃はどうでしたか?」といった質問まで遡ることもあります。
このような対話重視のアプローチにより、最終面接まで進んだ方からは「自分を深く理解してもらえた」という言葉をもらうことが多いです。それが、次のキャリアへの一歩を踏み出す励みになっているようです。
さらに、社員の働き方についても柔軟性を重視し、正社員雇用に限らず、業務委託、副業、有期雇用など、多様な形態での人材受け入れを進めています。個々のライフスタイルや価値観に合わせた働き方を尊重することで、より多様な人材が活躍できる環境づくりを目指しています。
人的資本最大化で切り拓く、CCIグループと地域の未来。
当社では2025年10月に社名を「株式会社CCIグループ」へと変更します。未来を構想し、挑戦し、創造する「ビジョナリーリージョン」の実現を目指し、地域から世界をよりよいものへと変えていくことを目標に掲げています。
その先に見据えているのは、社会課題の解決です。私たちは自社の収益だけを追求するのではなく、地域や社会が抱える課題に真摯に向き合い、解決していくことこそが、企業理念に基づいた私たちの使命であると考えています。
すなわち、人的資本の最大化による企業価値の向上、そして地域・社会への貢献。これこそが、CCIグループが目指す方向性です。AIとの共存も図りながら、今後も継続的な変革を進めていきます。
そのためにも私たちは、地域の課題解決に真摯に向き合い、チャレンジ精神を持って共に成長していける方と一緒に、北陸から新しい未来を創っていきたいと考えています。
あなたの専門性と情熱を十分に発揮できる環境で、ともに地域の明日を切り拓いていきましょう。