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社員と会社が共にステップを上り、未来に繋がる文化を残せるように。

株式会社NTTデータ北陸
代表取締役社長 髙橋 将樹

石川 更新日:2023年5月10日

1997年 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ入社。
2013年9月 システム開発、経営企画部を経て、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ九州へ出向。
2022年6月 株式会社NTTデータ北陸、株式会社NTTデータ信越 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

開発者からスタートし、経営側へ。30歳が大きな転機に。

私がNTTデータに入社したのは1997年で、当初はシステム開発者としてキャリアをスタートしました。最初は公共系の仕事に携わって、2000年から始まった政府のeジャパン戦略の取り組みの中では、郵政省(現総務省)の申請手続きオンライン化を8年ほど手掛けました。その後、会計や経営管理業務に携わってみたいと希望して、本社の経営企画部に異動したんですね。開発一筋だったところから、30歳の時に全く畑違いのところへ行き、会社の事業計画やIRの対応、経営評価、経営会議、役員の戦略会議の事務局などを担当していました。

その後、製造業関係のお客様のITコンサルを経て、NTTデータ九州へ3年半、出向しました。ここではソリューション事業に関わり、図書館の管理システムや大学教務事務管理システムの企画開発、資本提携した銀行様ITシステム会社とのグループ再編プロジェクトなどを手掛けました。再び本社に戻ってからは、NTTデータの地域9社を親会社の立場で管理統括する組織に配属され、事業戦略などを担いました。その後、公共社会基盤分野の企画を経て、2022年6月にNTTデータ北陸とNTTデータ信越の社長に就任しました。

振り返ると、やはり30歳のときに経営企画部へ異動したことが自分にとっての大きな転機でしたね。経営企画部に異動するとき、上司からは「開発者として一番脂が乗っているときに本社へ行くというのは、先々開発をしていくのであればマイナスだ。その代わりに得るものを自分で見つけないとダメだからな」と言われました。

幸いにして、そこでの経験によって会社というものを知ることができましたし、当時の経営企画部のメンバー、法務、総務、財務、人事の皆さんとの人脈は自分の糧になりました。まさか、その先に自分がグループ会社の社長になるとは思っていませんでしたが、あのときの経験が確実に生きていると感じますね。出会った人たちとのつながりが今も強いですし、その出会いがあったからこそ今がある。非常に人に恵まれたと感じています。

NTTデータ北陸はIoTやAI技術を核にしたシステム構築が強み。

今回、私が社長として担っているミッションは、「地域ビジネスをNTTデータ北陸として、いかに盛り上げていくか」ということだと思います。NTTデータグループは日本全体を盛り上げていくことを重要と捉えています。まずNTTデータ自体は大きなお客様や社会インフラなどを支えている訳ですが、ミドルマーケット、つまり地域もグループとしてしっかり支え、よりよい社会を作っていくことに貢献することが重要な役割だと思うんです。そのなかで我々は、「NTTデータグループのノウハウや知見、ビジネスプロセスを、どう地域に反映していくか」という使命を背負っています。

当社をはじめ、地域会社は9つあって、全て同じタイミングで発足し、9社9様の成長をしていて、それぞれに強みを育んでいます。NTTデータ北陸については、まず、IoTやAI技術を核にした社会基盤事業が強みの領域です。北陸に根差した事業だなと思うのは雪情報関連ですね。積雪を監視して道路障害についてのアラートを出したり、消雪用の水を制御したり、除雪車の待機・出動要請を行ったり稼働時間が確認できるシステムなどを長年手掛けてきました。

そこから道路、河川、防災といった分野にも展開しています。交通状況をネット上で確認できる道路情報システム、河川の水位、雨量を観測・監視しながら住民への避難支援を可能にする河川情報システム、防災では震度情報ネットワークなどを手掛けています。

Edge-to-Cloudと言われていますが、IoT機器を使ったシステムを構築するのに長けていて、そこが当社の一番の強みと捉えています。また、公立図書館などにシステムを導入していますが、そうしたシステムは全てを自前で作っていく訳ではないんです。先ほど言ったように地域9社それぞれに強みがあり、たとえば、図書館のシステムであればNTTデータ九州が開発したものを、税金に関わるものはNTTデータ本体のものを活用するという形で、地域・グループの商材を活用して地元のお客様に提供しています。

北陸のソリューションを活かして全国のお客様へサービスを提供。

もうひとつの柱が金融・法人ビジネス事業です。金融機関と法人のお客様へのサービス提供をしていて、これから強くしていきたいのがこの法人ビジネス分野です。現在は社会基盤事業で培ったIoTやAIのノウハウを、製造業のお客様に展開していこうとしています。工場内の設備をそれらで監視することで、運用効率や作業効率を上げる取り組みですね。これも、まずは地元のお客様への提供で実績を積んで、その先は他の地域でも、グループ会社を通して我々のサービスを提供していく形を描いています。

システムというのは、通常は目に見えないことが多いですが、我々は割と目に見えるもの、生活に近いものを手掛けていて、面白い領域だなと思います。先進的な取り組みもしなければいけないので、自治体と一緒に雪の研究をしたり、気象予測に繋がる海洋研究をNTTの研究所とコラボレーションして行ったりなど、社会課題の解決に繋がっていく取り組みを、少しずつご支援させていただいています。

外販エリアは北陸だけでなく、東北、関東、中部など広範囲ですし、グループ会社やNTTとも連携しているので、北陸に居ながら、日本全国のお客様にサービスを提供することが可能です。NTTデータグループでも全国一体経営と言っているのですが、当社ならではの醍醐味と言えると思います。

社員の人生において、仕事を通して成長実感を得られる会社に。

人が主体の会社なので、社員に対してはなりたい自分の実現に向けた人事育成を強化しています。私が理想とするのは、成長実感を得ながらイキイキと働ける会社。人生で仕事に関わる時間は非常に長いです。同じ働くならば、やらされていると感じるより、ポジティブにイキイキと働けるほうが素晴らしいと思うし、そういう会社になっていくことで、いろいろな原動力に繋がっていくと思うんです。

その人材育成の中で重要だと位置付けているのが、社員との対話会です。社員がどう思って、何の課題を持って仕事しているのかを知ることが会社を良くしていく上で、非常に大事だと思うので、チームごとに年1回の対話を行っています。当社の場合、社長は交代するものですので、私がやるならば社員にとって有効だと感じるものをやって、会社に残していける取り組みをしたい。対話をするとたくさんの課題が出てきますが、一度に全部とはいかないまでも、解決しながらお互いに一歩ずつ階段を上がっていくように、会社・事業を良くしていきたいなと考えています。

求める人材としては、「どう成長して、どういう自分になりたいのか」を明確に持っている人ですね。「自分の夢をこの会社で一緒になって実現していきたい」という思いを持つことは、育成し成長していく入口としては大事だと思います。

より多くの成長機会を提供できる人事・人材マネジメントを。

当然ながら、会社にとって人事・人材マネジメントはとても重要です。得意領域、得意技があることは大切なのですが、10年、20年と同じところに居るよりも、異動を経験することで比較対象ができて世界が広がるので、成長のためには非常に有効なのです。経営者からすると、人を動かすのはリスクですから、異動はさせないほうが楽です。しかし、それに甘んじていてはダメで、中長期目線で人材育成していくことをしっかり考えなければいけないと思いますね。

その際、「行ったきり人事」ははなく期限を決めて、本人のやりたいことも尊重しながら、どういう目的を持って異動先で経験を積み、戻ったら自分の強みを活かしていこう、という話をしっかり伝えられるかどうかが大切だと思っています。もちろん、途中で事業内容や本人の気持ちが変化することもあるでしょうから、見直すポイントを設けてキャリアを描いていくことが大事だと思いますね。

もうひとつは、新しく入社した人に対して、立ち上げを丁寧にすることも指導しています。新卒入社の社員は入社から時間をかけて立ち上がるのであうんの呼吸も分かるようになりますが、当社の場合は、経験者採用で入社した人が来た時の対応がまだ不慣れだったんですね。どうしたらチームの一員になってくれるのかをしっかり考えてサポートすることの大切さを伝えています。

「考えろ、変われ、動け」が自分を鼓舞し続けてくれる言葉。

私は北陸と信越の2社を同時に見ているので、事業戦略のフレームワークや育成メニューなどの企画立案や運営を共有して取り組んでいます。課題は同じですし、一方がやったものをもう一方に輸入すれば2倍のことができる。こうした取り組みは企画・運営する社員への負担も大きいので、お互いに融通しながらやっていますね。

育成の面で言うと、社員から最新のクラウドやAI、IoT、ローコードなどについて、業務では直接関係ないけれど学びたい、という声が多いんです。それぞれがなりたい自分を実現するためには、こうした要素技術も知っておかないといけないので、そのために2社横断の「部活」を立ち上げています。

これもNTTデータでやっていた取り組みを輸入した形です。北陸だけでやろうとすると、社員が170人なので母集団が形成しにくい。それを信越とコラボレーションすれば合計300人になって、いろんなことで母集団ができるんですね。さらに他のグループ会社はこういう経験ができているとか、こういう思いを持っているんだな、ということを感じたり、気づいたりしてほしいです。日頃、どうしても目の前の仕事にかかりきりになりがちなので、いろいろなつながりの場を作っていくのが、私の大きな役割だと思っています。

講師にはNTTデータからスペシャリストを迎えることで、刺激を与えて、新しい技術を学ぶ場にしていきます。社員の育成は本当に大切なのですが、現状では時間が割けていないので、勤務時間の10%は育成の時間に充てるように言っています。「時間がない」とみんな言うのですが、どうしたら育成の時間を作れるかを対話しながら実現していかないといけないし、私たち自身で変えていかなければいけないんだという文化、風土を作っていくことも大切だと考えています。

私が経営企画部に行く前くらいにNTTデータの成長戦略のキーワードとして「考えろ、変われ、動け」というスローガンのようなものがあって、それを自分の中ではずっと言い続けています。要は考えることをしないとダメだよね、変わることを考えないとダメだよね、自分を変えろ、そのためには動け、ということ。私自身を鼓舞させている言葉になっています。社員に後々、これが残って良かったね、というものができるように、対話をしながら進んでいきたいと思います。

編集後記

コンサルタント
小林 洋平

インタビューの依頼を快諾してくださったと人事の方からお聞きしていたため、当日を非常に楽しみにしておりました。当日は最初からオープンにご自身の経歴を話してくださったこともあり、髙橋社長のお人柄にどんどん惹き込まれていきました。

エンジニアとしての経験がベースにある髙橋社長の言葉には非常に説得力がありましたし、社員との対話による文化、風土作りに重きをおき、中長期で人材育成に取り組んでいることを熱く語られていたのがとても印象に残っています。

同社が経営理念で掲げる経営姿勢に「企業は人なり 社員は人財なり」がありますが、髙橋社長の言葉、そして同社での取り組み一つひとつに、その思いが強く込められていることを感じました。これからの同社のチャレンジ、そしてそこから生み出されるソリューションが楽しみでなりません。

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