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IoTデータを活用して未来の常識を創る。

エコモット株式会社
代表取締役 入澤 拓也

北海道 更新日:2021年6月16日

1980年生まれ、札幌市出身。高校卒業後、アメリカへ留学。2002年、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社に入社。2007年、エコモット株式会社を設立し、代表取締役に就任。ワイヤレスセンシングとクラウドアプリケーションを活用したIoTインテグレーション事業を行う。2017年、札幌証券取引所アンビシャス市場、2018年、東京証券取引所マザーズに上場。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

映画監督志望からインターネットの世界に方向転換。

札幌の高校を卒業後、アメリカのシアトルにある大学に留学しました。アメリカへ行った理由は、映画監督になりたいという夢があったからです。高校時代から映画が好きで、作家になりたいという友人と一緒に、限られた設備で映画を撮りました。今ではスマホがあり、映像編集のツールも豊富ですが、当時は撮影機材も高く、ツールもなく、出来上がったのはアナログの荒い画像だったのを覚えています。

アメリカで映画の勉強をしようと入った大学には、まるで映画で見たような典型的な歴史ある図書館があったのですが、そこには当時の最先端であるパソコン部屋があり、メールやチャットを楽しんでいる学生の姿に衝撃を受けました。「これから間違いなくインターネットの世界が来るんだ」と確信した瞬間です。

その後、日本に戻りパソコンを買い、再度アメリカに行きました。映画の学校を探していたのですが、インターネットについて勉強しているうちに、映画よりもインターネットのほうが面白くなり、方向転換。授業はもちろん英語だったので、さっぱり分からなかったのですがインターネットへの興味は深まりました。

インターネットを活用して社会の問題解決に貢献。

大学を卒業して就職したのは、効果音の輸入販売を手掛けている会社でした。ゲームやテレビ番組で使われる効果音や携帯電話の着信メロディの事業を立ち上げたばかりで、それらの事業を担当することになりました。デジタルコンテンツのビジネスは、ユーザが1人でも10万人でも原価は同じ。大手携帯キャリアで会員を集め、ビジネスは順調に伸びました。当時、音源サイトはわずか100くらいで差別化もできていましたが、その後、市場は1万サイトにも膨れ上がり、ガラケーの時代が終わると同時にこのビジネスも終焉を迎えます。当時26歳でしたが、やり切ったという思いがありました。

それから考えことは、「自分にしかできないこと」、「他の誰もできないこと」をやりたいということ。もともと環境問題に興味があり、携帯電話の技術を使って環境問題と向き合える事業を考えたくて、社名「エコモット」にもその思いを託しました。そんなときに、たまたまロードヒーティングの遠隔監視という案件が舞い込み、新しいビジネスの道が拓けると感じました。経営理念にも掲げている、「未来の常識を創る」につながるものがあり、社会問題+インターネットで新しいインフラを構築するための一歩となったのです。

IoTプラットフォームで念願のグランプリを受賞。

創業当時からモノづくりがしたいという想いがあり、モノと通信システムを組み合わせた何かを開発したいと考えていました。今でいうIoTです。これまで関わってきたデジタルコンテンツをクラウドで制御するというのは当時あまりなかったのですが、これからは必要だと感じ、取り組みました。

たとえば新しいことをやろうとして、その都度システムを作っているとお金と時間がかかります。そこで開発したのがIoTデータコレクトプラットフォーム「FASTIO」でした。約10年にわたって運用してきたセンシングのノウハウを生かし、IoTデータを収集してビジネスに貢献できるサービスです。

課題となったのは、やはりセンサー機能。全国にはたくさんのセンサーメーカーがあるので、「センサーに通信機能をつけませんか?」というアプローチで、全国のセンサーメーカーを訪ね、最終的には北海道の会社と一緒に取り組むことになりました。2015年には、モバイル技術を活用したIoT/AIユーザーシステムで成果を上げている企業・団体を評価する「MCPC award 2015」のプロバイダー部門でグランプリを受賞。3度目の挑戦で獲得した念願のグランプリ受賞は、当社の大きな転換期となりました。その後、2019年には、KDDI(株)と資本業務提携をしました。

これまでの支援に恩返しするための上場。

会社を設立したころから、会社を公器にしたいという思いがありました。最初は夢やロマンに似た漠然としたものだったのですが、次第に、会社の信用を得たいとの思いが強くなりました。例えばマンションにロードヒーティングを導入しようとしても、「マンションの入居者の生活を守るのに、聞いたこともない会社には頼めない」、と言われることも多く、悔しい思いをしてきたからです。そこで会社の信用が必要だと痛感し、2017年、札幌証券取引所アンビシャス市場に株式を上場、2018年、東京証券取引所マザーズに株式を上場しました。

上場に関しては、コストと時間がかかりメリットだけではないことを知りました。しかし、信用度が高まり知名度も上がる、そして人材採用の面でもプラス効果があり、満足しています。どうして札幌証券取引所アンビシャスだったかといえば、これまで地元の多くの方からベンチャー企業支援などのたくさんのサポートを受けてきたので、なんとか恩返しをしたかったからです。これまでの支援が無駄ではなかったと思ってほしい。だからこそ、もっと成長しなければという思いがあります。

あらゆる概念が変わる、未来の常識を創る時。

そもそも環境問題に取り組みたくて会社を創業したこともあり、社名もロゴマークにもその想いを表現しています。しかし震災を機に、人命や災害支援にも貢献したいという方向に少し考えが変わりました。たとえばIoT傾斜計(傾きを検知し、警告・警報を送信するシステム)があれば、震災時に救えた命があったかもしれません。そうした体験を経て、改めて地元・北海道の「経済、環境、人」に貢献したいという想いが強まりました。

政府が成長の原動力として「グリーンとデジタル」を掲げ、エネルギーマネジメントが注目される動きは、まさに当社の理念と合致し、得意とするところです。将来、ガソリン車や火力発電所がなくなり、エネルギーの大変革が起きます。そこにはビジネスチャンスがたくさんあります。大規模な発電所に代わり、小さな発電設備や蓄電設備をIoTなどのデジタル技術でつなぐバーチャルパワープラントのような動きが間違いなく加速するはずです。そうなると遠隔による操作、監視、制御が必要になり、そこに当社の技術が生きるチャンスが生まれます。風力やバイオマスなど、エネルギーを自前で作り出し、大きな利益を生み出せる北海道には可能性が満ちています。エネルギーをはじめ、あらゆるものの概念が変わろうとする今、まさに「未来の常識を創る」時です。

新発想で仕組みやサービスを構築し、組織の原動力へ。

当社の理念である「未来の常識を創る」に惹かれてくる若い方が非常に多い実感があります。しかしながら、事業を開発・企画して、構想から行動まで完結できる人がなかなかいないというのも現状です。若い人には仕組みやサービスを新発想で考え、オリジナリティの高いものを作ってほしいです。営業やエンジニアに加え、組織をしっかりとマネジメントできる人材も必要です。組織で大きな成果をあげたいというマインドのある方も、ぜひ活躍してほしいです。

一方で、私が注目しているのは、SNSなどで積極的に情報を発信している人。行動力がある人は、可視化できるSNSツールを上手に使って、メッセージを発信しています。どんな職種においても、新しいことにチャレンジしたいという人には、行動力が備わっています。チャンスは無限にあります。「映画監督になりたい」と、夢見た学生時代でしたが、今の人にはそういう夢を持っている人が少ないと思います。まだこの世の中にない大きな夢を抱き、一緒にチャレンジしていきましょう。

編集後記

コンサルタント
千葉 悠樹

私が入澤代表と知り合ってから、7年になります。その7年間一貫して変わらないのは、常にご自身が考える最新のビジネスを熱く語り、会社の成長を前向きに、楽しそうに話される姿です。

そして、それを映し出したかのように、会社の雰囲気も良く、社長の経営理念に共感する方々が集まり、情熱的に仕事をしています。

同社のビジネスは、IoT技術を通じて、特に「人命」や「未来の地球環境」に関わる分野で、人間に代わって目となり耳となる機器、より速く正確な判断につながる機器の開発・普及をすることと理解しています。

特に今後は、同社が強みとする「グリーン×デジタル」の領域に、社会全体が大きく動いていきます。その背景のもとで、同社が今後どのようなビジネスを生み出し、社会に変革をもたらしていくのか、とても楽しみです。

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