採用が経営を変えた瞬間 代表取締役社長 兼 最高経営責任者 本郷 秀之氏

デジタルマーケティング分野で
アジアNo.1シェアを目指す。

スターティアホールディングス株式会社 / 代表取締役社長 兼 最高経営責任者 本郷 秀之

Vol.109

スターティアホールディングス株式会社
代表取締役社長 兼 最高経営責任者 本郷 秀之

熊本

熊本県長洲町出身。東京のホテル専門学校へ進学。ホテルのボーイ、布団販売、情報機器販売の営業などを経て、1996年に有限会社テレコムネットを設立。2004年商号をスターティア株式会社に変更。05年東証マザーズ上場。15年東証一部上場。18年商号をスターティアホールディングス株式会社に変更。同年には、熊本の就学困難者に対する奨学援助を行う「公益財団法人ほしのわ」、熊本の起業家を支援する「一般社団法人熊本創生企業家ネットワーク」を設立、それぞれの代表理事も務める。

更新日:2021年4月28日

ITインフラ事業とデジタルマーケティング事業で企業の業績最大化を支援

当社は大きく分けると「ITインフラ関連事業」と「デジタルマーケティング関連事業」の2つの事業を展開しています。1996年に現在の主力事業でもある「ITインフラ関連事業」からスタートしました。市外電話や国際電話割引サービスから、電話機・コピー機の販売、ネットワーク環境整備やウェブサービスへと事業領域を拡大。お客様から要望があれば「何とかします」と答え、それから解決策を必死に考えることで、技術や知識・ノウハウを蓄積していきました。ちょうどその頃、通信環境や先端技術の進歩とともに、企業経営においてインターネット、ネットワーク、セキュリティの重要度が高まってきました。しかし、多くの中小企業にはネットワークに詳しい担当者が存在せず、最新技術を活用しきれずにいる現状もありました。そこで私たちは、ネットワークの専門家がいなくても、24時間365日安心して運用できるネットワークアウトソーシングサービスの提供、保守・サポートを実施。その結果、お客様の更なる発展に貢献できたと思います。世の中のニーズの高まりとともに、スターティアも成長を遂げ、東証一部上場まで一気に駆け上がりました。

もう一つの事業の柱が、「デジタルマーケティング関連事業」。導入実績2,500社以上の電子ブック作成ソフト(ActiBook)、市場導入シェア国内プロバイダーNo.1のMAツールBowNow(バウナウ)や、1900社の導⼊実績を持つARアプリのCOCOAR2(ココアル)などのITツール(SaaSサービス)を活用して企業の売上を伸ばすお手伝いを行うサービスを行っています。また、弊社のITツールの大半が導入シェア国内1位か2位です。それぞれのブランド力の高いSaaSツールをワンパッケージにしたサービスが「CloudCIRCUS(クラウドサーカス)」です。企業が業績を上げるために必要となる「情報発信」「集客」「顧客体験価値向上」「見込顧客育成と顧客化」「解約防止・リピート増」を実現するためのSaaSツールが揃っています。

中期経営計画「NEXT’S 2025」、3年50億円の投資でアジアNo.1を目指す

2025年3月期の売上CAGR(売上高年平均成長率)20%以上、社内のDXを加速させ生産性の高い組織体制でROE10%以上を実現することにより、時価総額500億円を目指し企業価値を高めていきたいと考えています。これは私達の新たな挑戦です。デジタルマーケティング関連事業においてはSaaS型のサブスクリプションモデルに大きく舵を切り、戦略的な投資による開発体制の強化、並びにブランド強化を推進し、中長期的な高収益化成長とデジタルマーケティング分野におけるアジアNo.1のシェア獲得を目指していきます。また、ITインフラ関連事業においては商材と販売エリアのさらなる拡充を進めオーガニック成長を遂げていきます。IT業界における時代の変化に乗り遅れることなく事業やサービスにおけるDXを展開すると共に、社内業務環境においてもDXを推進し業務効率化による生産性向上に取り組み、企業価値向上に努めていきたいと考えています。

創業の想いは「つぶれない」「ちゃんとした会社」

もともと起業しようと思っていたわけではないのです。私は長洲町の出身で、進学塾を開いていた父からは幼い頃から勉強しろと言われて育ちました。当時は勉強にあまり興味がなく、とにかく外の世界を見てみたいという気持ちが強く、高校卒業後に上京し、ホテルの専門学校で学びながら実際にホテルのベルボーイとして働きました。ホテルマンになりたいというよりも、ホテルマンになったら海外で仕事ができると思ったからです。ですが、実際に働いているともっと厳しい世界に挑戦したいという思いが強くなり、布団の訪問販売の会社に入社して6年間営業の修行を積んだ後に、情報通信機器の販売会社に入りましたが、その会社が乱脈経営で倒産。当時の部下たちからの「本郷さんが社長をやるなら、僕らはついて行きます」の言葉で独立を決意。「会社は絶対つぶしてはいけない」「経営者は人の道に反してはいけない」「上司は部下以上に働かないといけない」と心に決めたのが29歳のときでした。

2006年くらいから「モノを所有する時代ではなくなる、ストックビジネス(今でいうサブスクリプションやSaaSモデル)に変わっていくのでは?)と感じていました。当時、ITインフラ事業がなくなるとは思っていませんでしたが、この事業を駆逐してしまうような新たな商品やサービスが台頭するのであれば、それは自分たちでありたいと考えたのです。そこで抜擢したのが新卒で入社した若手社員。私たちの成功体験とは全く異なる事業で権限を与えて任せ立ち上げたのが電子ブック作成ソフト(ActiBook)。ここからデジタルマーケティング事業がスタートしました。

業界に先駆けて取組んだ新卒採用を継続してきたから今がある

即戦力の中途採用が中心だったITインフラ業界の中で、いち早く新卒採用を開始しました。社会保険の整備・有給取得の奨励・労働環境や待遇改善など様々な改善に努めてきました。新卒採用では突き抜けた経験をしてきた学生を採用するようにしています。その一環として行っているのが「麻雀採用」。就活生が参加する麻雀大会を開き、優勝者には最終面接の「内定リーチ」を進呈し、2位以下の学生にも、最初の面接を免除するというユニークな取り組みとして話題となりました。さらに、女性が働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。従業員の有志が参加する「スターティア女子委員会」の提言により、育児休業期間の延長、保育料や婦人科検診の補助など、女性のための制度も充実させています。とにかく、新卒は強い企業文化をつくるのに欠かせないと思っています。こちらが真剣に向きあえば、素直に応えてくれますからね。その甲斐もあり、現在は創業当時には考えられない優秀な人材が集まるようになってきました。しかし、常に危機感を抱いています。創業25年経ち、上場企業としての信頼やこれまでの実績から、あまり考えなくてもそれなりの成果が出る環境です。そうなると社員がいつの間にか自分の頭で考えなくなってしまい、私はそれを一番恐れています。ですから弊社では私主導の若手経営塾を実施するなど、答えを与えず社員自らが考えることを習慣づける取り組みを行っています。

「仕事の報酬は仕事」だと考えています。チャレンジングな仕事やポストを与え続ける、そのためにも企業は成長させないといけないのです。これからアジアでNo.1のITサービスを創る。そしてアジアを舞台にした、これからの事業を担う経営陣を育てることが、私の最後のミッションです。各事業部を株式会社化し、次のリーダーたちに実際に企業を経営してもらいます。それが、一番の経営人材の育成になるからです。自分のことを振り返っても、一番成長したのは、誰も助けてくれない環境で、腹をくくって仕事をしたときです。神輿はかつぐ人間が増えると、必ず全力を出さない人間が現れます。それが大企業病です。でも弊社は、どんなに社員が増えても、一人ひとりの社員が覚悟を持った、ベンチャー精神を失いたくない。そのためにも責任と権限を委譲し、組織を細分化していくことが大事です。1万人の大企業をつくるより、社員100人の会社を100個つくることを目指しています。

熊本の起業家と学生の育成を通して熊本の復興を支援する

ちょうど50歳の時に熊本地震が起きました。交流があった熊本の経営者に、かなり深刻な状況であることを聞き、熊本に帰ってみたんですね。飛行機から熊本の街並みを見下ろした時の屋根にかかったブルーシートの数に驚き、そして崩壊した熊本城‥‥。ふるさと納税をしたり、義援金を送ったりする中で、「これでは根本的な解決にならない、起業家にしかできない事は何か?」を本気で考えました。いきついたのが「雇用と納税」です。これまで私が学んだこと、失敗してきたことを共有することで、熊本の経営者を育て、熊本の企業の売上を増加させ、雇用も増やしていくこと、そして納税額も増加させていくことで経済的に良い循環を作っていくことだと考え、「熊本創生企業家ネットワーク」を立ち上げたのです。ネットワークが目標に掲げているのが「100・10・1プロジェクト(会員数100社・会員100社が10人の雇用を生み出す・1社1億の利益を増やす)」です。これにより熊本県に1000人の雇用と100億の事業収入をもたらしたいと考えています。

奨学金財団「公益財団法人ほしのわ」は、熊本県の高等専門学校(4年生以上)、専修学校及び大学に在籍する学生で、工学・情報学に関する分野を専攻する経済的理由により就学継続が困難な学生に対し、返済不要の奨学金援助を行うことを目的として設立しました。熊本の事を勉強していくと、震災以前より高卒の4割、大卒の6割が県外で就職し、少子高齢化が深刻化していく事を知り驚きました。2年前から熊本大学との共同研究をスタート、また客員教授として講座も担当しています。講義ではIT業界の話を中心に、世の中でどういうことが起きているのか?DXとは?グローバル化とは?など、経営者目線で学生たちに刺激を与えています。一方で熊本にも面白いベンチャー企業や魅力的な経営者がたくさんいることも伝えています。

最終的には、「熊本創生企業家ネットワーク」の経営者と学生のマッチング出来たらなあ…と。経営者が「5年後10年後、こんなサービスで世の中を変えるんだ!」と未来を語り、優秀な学生がビジョンに共感し、企業をストレッチさせるような展開になればいいなあと考えています。事実、弊社の躍進を支えてくれたのは、間違いなく新卒です。業界に先駆けて新卒採用を実施し、どんなに厳しい時でも採用し続けてきました。新卒が会社のカルチャーを受け継ぎ、新たなチャレンジを生み出しています。電子ブックもITツールも優秀な若手社員を採用し続けたから今があるのです。

2021年4月、熊本市に10カ所目の拠点をOPEN

2021年2月に熊本市と立地協定を締結しました。オフィスの地方分散を図った事業活動の強化と障害者の雇用促進を目的に、熊本市中央区に事業所を新設します。22年3月期の従業員数は5名(うち障がい者3名)、24年3月期には15名(うち障がい者10名)への拡充を計画しています。障がい者の業務は、当グループの委託業務のみならず、RPAやAI-OCRを活用して過去の紙文書をデータ化するなどBPO業務の受託活動を行い、企業のペーパーレスを推進します。採用は熊本県内を中心に行い、地域の雇用創出に貢献するとともに、県外からのUIターンの採用も積極的に行い、熊本の発展に貢献したいと考えています。

編集後記

「起業家だからできる、熊本の復興支援は『雇用と納税』だ」。熊本地震直後から、強い使命感と推進力で、熊本の経営者の育成や若者支援活動を続けていらっしゃる(しかも東証一部上場企業の経営をしながら…)本郷社長の姿には大変感銘を受けています。また、企業の成長のポイントとして、変化を恐れずチャレンジすること、勇気を持って任せること、最適な判断を行うためにも日々驕らず学ぶこと、など、私自身の成長につながる貴重なヒントを頂けたインタビューの時間でした。私たちも「雇用の創出」こそが最大の地域貢献だと考えています。これからも一緒に「雇用創出」を通して熊本の発展に貢献できるよう連携していきたいと考えていますし、私たちにしかできない求人開拓を誰にも負けない努力でやり切ろうと思います。

文:リージョナルスタイル認定コンサルタント 田尻 由美子

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