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世界品質の金属開発技術。自動車業界から未知の領域への挑戦。

東北特殊鋼株式会社
代表取締役社長 成瀬 真司

宮城 更新日:2021年1月20日

愛知県出身。慶応大学卒業。大同特殊鋼入社後、経営企画部長・常務執行役員、大同興業取締役常務執行役員を経て、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

創業から受け継がれる研究開発のDNA。

当社は、鉄鋼・金属学研究の世界的権威であった東北大学・本多光太郎博士の提言と、初代社長・原田猪八郎の「仙台の地に産業を興したい」との想いが重なり、1937年、特殊鋼メーカーとして設立されました。

以降、現在に至るまで、東北大学および同学金属材料研究所をはじめとする様々な研究機関と連携し、研究開発を進めています。

会社設立当初から様々な技術を開発、商品化し、世に送り出してきましたが、その研究開発のDNAは脈々と受け継がれ、1960年には「電磁ステンレス鋼」の開発・製造を実現しました。車のエンジン等の燃料噴射装置に使われる「電磁ステンレス鋼」は、エンジンバルブに使われる「耐熱鋼」と合わせ、今でも当社の主力製品となっています。

また、これらの製品は、特定の自動車メーカーだけではなく、自動車部品メーカーを介して世界中の自動車に使われており、高いシェアを誇っています。ちなみに、国内シェアにおいては、その多くを親会社である大同特殊鋼と当社が担っています。

創業以来、宮城で培ってきた技術を武器に、世界へ挑む。

当社が手掛ける自動車のエンジンバルブに使用される「耐熱鋼」は、お客様から耐摩耗性・耐熱性等において厳しい品質水準を求められている、大変難しい製品です。

一方、軟磁性という特性を持った「電磁ステンレス鋼」は、電気を与えるとくっつき、電気を切ると離れるというもので、その機能のレスポンスの良さと強度が要求されるものです。当社の「耐熱鋼」、「電磁ステンレス鋼」は、これらのお客様からの要求品質という観点で高く評価されています。だからこそ、高シェアを維持できているのだと思っています。

会社の設立から宮城県というローカルな地に本社を構えていますが、マーケットは年々グローバル化しています。そのなかで、なぜこの地にこだわるかと言えば、長く培ってきた固有の技術がここにあり、それをどう生かせるかということを突き詰めていかなければならないからです。

そのことを一番意識しなければいけないのは我々自身です。しかし、この地でやっていくだけでいいとは思っていません。現在、タイとインドに製造工場がありますが、国内拠点との連携と機能分担を見極め、それぞれの地で相応しい事業を展開していきたいと思っています。

新しい事業を展開し、ビジネス創出を強化。

我々は、関わりの深い自動車業界に目を向け「10年後はどうなっているのか」を注意深く考察しなければなりません。日本や欧米では、従来型のエンジンが30年後にはなくなると言われてきましたが、もっと早く10年後には大きく変化しているだろうと認識しており、既に強い危機感を覚えています。

電気自動車の普及はインフラの整備が難しい面もありますが、十分に考慮しなければなりません。そして人口減少などから、自動車マーケットも減少します。そのようなことから、既存のものに頼るだけではなく、新しい分野に着眼する必要があります。

今まさに、新しい商品や事業をビジネスとして構築する必要に迫られていますが、その戦略はすでに進行中です。

東北大学などと共に技術開発を進めてきた当社には、商品開発の仕組みが存在し、多数の技術も保有されています。数年前からそれら技術の棚卸しをし、現在は開発深耕と顧客評価の中で、新しい事業の展開を模索しています。

より高度なクオリティを追求する開発精神。

そのような気風の中で、2020年10月、高機能材料事業部をスタートさせました。そのきっかけとなったのが、重症化した新型コロナ患者の治療に使われている「ECMO(エクモ)」の存在です。ECMOの流体コントロールの重要な部分で当社の材料が使われていると知ったからです。

我々が知らないマーケットで当社の材料が使われ、未知の可能性があることを強く認識できたので、さらなるマーケティングの強化に努めていこうと思います。

今後の展開として、これまでまったく意識してこなかった新しい市場に取り組むという点で起爆剤として期待できるのが、以前から開発を進め、当社で特許を取得している「磁歪材」という素材です。

その特徴は、電気を与えると磁場を起こして振動し、逆に振動するところに置くと電気を起こすという双方向の強力な機能を持っていることです。この「磁歪材」は応用範囲が広く、未知の可能性を秘めています。

現在、具体的に進めている事案は農業分野です。農業用ハウスの害虫駆除に有効な結果がでているので、商品化を視野に開発を進めています。その他、設備投資として新溶解炉を導入し、機能材料の開発の幅を更に広げていきたいと思っています。

チャレンジ文化を根付かせ、変化のある機敏な組織へ。

当社では、今までにないことをプロジェクトとして取り組み、事業化にチャレンジしていくことが、これからの重要なミッションとなります。

社員に期待することは、成功するか分からないところにも果敢に挑戦するということ、そして、制約のないところで可能性にチャレンジできることを面白いと思ってほしいのです。

これまでは自動車関連の安定した基盤で勝負してきました。しかしこれからは、ネバーギブアップの精神で、トライを続け、じっくり育て、まだ知らないどこかで花を咲かせてほしいと思っています。

私がよく口にするのは「変化」です。普段の何気ない業務においても、見直して、変えることが必要です。そして変化にチャレンジできる組織でありたいと思います。さらに、やるべきことは後送りしないことも大切です。組織における機敏性のようなものを根付かせたいと思います。

まだまだやるべきことがたくさんある会社です。これから当社に入社される皆さんには「共にチャレンジしていきましょう」と伝えたいです。

編集後記

チーフコンサルタント
菅原 大

成瀬社長の「挑戦文化」という言葉がとても印象に残っています。今まで培ってきた技術や企業文化を大事にしつつ、新しい領域へチャレンジしていく同社の積極的な姿勢が、その言葉に凝縮されているように感じました。

事実、同社では挑戦が新たなビジネスの萌芽として現れており、これまで以上に事業領域に広がりを見せ始めています。

歴史ある同社の技術が、今後どのようなマーケットで存在感を強めていくのか、これからの展望に期待が膨らむインタビューとなりました。

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