採用が経営を変えた瞬間 デジタル戦略部長 瀬尾 浩一氏

ひろぎんホールディングス始動~
地域総合サービスグループへの挑戦。

株式会社広島銀行 / デジタル戦略部長 瀬尾 浩一

Vol.57

株式会社広島銀行
デジタル戦略部長 瀬尾 浩一

広島

広島県生まれ。1986年、広島銀行に入行。1988年から10年間、銀行のグローバル化を受け国際業務を担当、香港支店開設に携わる。1998年に帰国後、営業統括部 商品サービス担当に配属となり、インターネットバンキング等、当時普及し始めていたパソコンや携帯電話を活用したサービスの開発に従事。その後3か店の支店長、リスク統括部長などを歴任し、2019年にデジタル戦略部長に就任、現在に至る。
※所属・役職等は取材時点のものとなります。

更新日:2020年12月2日

ITを基軸とするリレーション&ソリューションの拡大・深化

瀬尾 浩一 | 広島銀行 デジタル戦略部長 兼 ひろぎんホールディングス デジタルイノベーション部 デジタル戦略グループ長

昨今の金融業界、とりわけ地方銀行を取り巻く経営環境は大きく様変わりしています。人口の減少や、低金利によって融資による収益の担保が難しくなっていること、異業種参入による競争激化など、枚挙にいとまがありません。そうした変化の中で、柔軟に、かつ的確に対応していくため、広島銀行は従来の銀行業務の枠組みを超えた変革を進めており、その一つが持株会社「ひろぎんホールディングス」への移行です。ホールディングス傘下に銀行や証券、投資会社といった5社を並列にし、今後はコンサルティングやフィンテックなど新分野のグループ会社を設立する方針です。グループシナジーの最大化を図りながら、金融はもちろん、非金融分野においてもあらゆるニーズに応えられる「地域総合サービスグループ」へと進化していくことを目指しています。その過程において重視しているのがDX、つまりデジタル化の強化です。かねてより下地作りは進めており、2016年8月に総合企画部内に「新事業開発推進室」を発足、その後2018年2月に「デジタルイノベーション室」へと形を変え、2019年4月に「デジタル戦略部」を新設しました。現在、30名弱が在籍しており、部内では「デジタルビジネス推進室」と「デジタル戦略室」に分かれて、それぞれプロジェクトを担っています。アライアンスパートナーとの連携強化や、専門的な知見やキャリアを持つ方の中途採用による内製化を進め、ITを基軸とするリレーション(顧客軸)、ソリューション(業務軸)の拡大・深化にコミットするのが私たちのミッションです。今回は推進室・戦略室それぞれの室長からも、目指す姿や求める人材についてお話させて頂きます。

“群雄割拠”のキャッシュレス時代の中で、広島銀行はどう在るべきか。

岩田 聡文 | デジタル戦略部 デジタルビジネス推進室 室長

私たちデジタルビジネス推進室は、主に既存サービスのデジタル化をミッションとしています。具体的に挙げると、「ひろぎんアプリ」のようなスマートフォンアプリの展開や、“銀行Pay”の一つである「こいPay」といったペイメント・キャッシュレスサービスの拡大などです。まずアプリに関しては、ひろぎんアプリの利便性をさらに高めるための取り組みに加え、外部連携を強化しています。ふくおかフィナンシャルグループのiBankマーケティング社が手掛けるスマートフォンアプリ「Wallet+(ウォレットプラス)」を当行の口座利用者向けのサービスとして提供したり、家計簿ソフトやクラウド会計サービスなどフィンテック系事業者とAPI連携することで、広島銀行としてのサービスラインナップは加速度的に増えています。またキャッシュレスに関しては、もちろんこれまで手掛けてきたカード型のサービスは継続しつつ、より“スマホファースト”を意識したサービスを強化しています。その一つが先述の「こいPay」であり、他にも地方公共団体やスポーツ団体などと連携しながら、新たな決済サービスを企画しています。これまでは金融サービスといえば銀行がメインプレイヤーでしたが、キャッシュレス領域では図式が変化しており、非金融からの新規参入が続く“群雄割拠の時代”になっています。その中で広島銀行が手掛けることの意義や強みを明確にしながら、拡大路線を目指すのか、独自路線を磨くのか、アライアンスを模索するのか、といった戦略を描いているところです。

-デジタルビジネス推進室が求める人材

<岩田氏>これまでは行内で知恵を寄せ合ってデジタル領域にトライしてきましたが、専門的な知見を持っていないため、限界を感じているのが実情です。中長期的な戦略を描く上で必要になるのは、最新の情報を正しくキャッチアップし、それらをもとに新しいビジネスに繋げていく企画の力です。例えば決済の方法がカードであってもアプリであっても、バックエンドの仕組みに大きな違いは無く、私たちが介在できる部分は多くありません。私たちが強みを発揮できるのは顧客接点。例えばクライアントから「QR決済を導入したい」と相談を頂いた際に、「どういったサービスを提案するのが適切か」、「広島銀行グループ全体のリソースをどう活用できるか」、「導入後に収集したデータをどう活用するか」といった企画をできることが重要になります。そういう意味では、銀行業務を経験していなくとも、キャッシュレスや決済ビジネスに携わった経験がある方は、十分に活躍できるフィールドだと考えています。現在の行内では「無理だ」と判断してしまうような事象に対して、懐疑的にメスを入れて頂ける方、大胆に言えば、銀行の中にいながらにして“銀行を批判”できるような客観的な視点、“銀行を知らない”からこそ生まれる発想力を持つ方にジョインして頂きたいですね。

地域課題の解決、地域経済の活性化に貢献するビジネスモデルを構築。

石原 和幸 | デジタル戦略部 デジタル戦略室 室長

広島銀行にとどまらず、グループ全体のデジタル戦略を描いているのが私たちデジタル戦略室です。広島銀行を始め、グループ各社におけるRPA導入やAI活用といった個別施策ではプロジェクトマネジメントを担い、また、グループ全体でのデータ利活用や高度化、新ビジネス創出といった領域では、中長期的な戦略の企画を担っています。先述の「地域総合サービスグループ」という観点で、ゼロベースで新しいビジネスモデルを検討したり、これまでにないデジタルサービスを展開していくことをミッションとしています。一般的に「預金」「融資」「為替」が銀行の三大業務といわれますが、私たちデジタル戦略室が進めているのは、例えば少子高齢化といった地域課題の解決を目指すような、銀行の枠組みを超えたプロジェクトです。銀行内で言えば“異色の存在”と言えるかもしれませんが、少し補足をすると、新たに誕生したひろぎんホールディングスにも「デジタルイノベーション部」があり、代表取締役社長の部谷が部長を務めています。そして、私たちデジタル戦略室はデジタルイノベーション部のミッションも兼務しています。つまり、経営TOPが主導するデジタル戦略の上流を担っていると言えます。現在、企画や実証実験といった様々なフェーズのプロジェクトが複数進行しており、今後具体的なサービスとして世に出す予定です。こうした新しい枠組みをつくるためには、従来の組織風土や文化も改革していく必要があるため、“変革マインド”を持つ行員を登用したり、外部からの中途採用を積極的に進めながら、体制を整備しているところです。

-デジタル戦略室が求める人材

<石原氏>戦略室においても推進室と同じことが言えますが、行内には無い専門的な知見やスキルを持つ人材を強く求めています。喫緊のポジションとしてはデータアナリストやサイエンティストといったデータ分析・利活用に長けた方にご入社頂きたいと考えています。現在、データ分析に特化したチームの立ち上げを進めており、まずは5名程度でスモールスタートする予定です。外部パートナーとも連携しながら、分析の高度化、ガバナンスの確立といった体制づくりをともに進めて頂きたいですね。また、分析特化とはいえ、分析結果をきちんとビジネスに実装していくという観点もチームとして重視していきたいと考えています。今後どのような方にジョインして頂けるか、デジタル戦略部全体として他部門やグループ各社との連携プロセスをどれだけ整備できるか、そのあたりを含めてチームの在り方を確立していくつもりです。また、今後も様々なポジションでの採用や新たな組織づくりを進めていくことになると思います。スキルや経験はもちろん重視しますが、限定はせず、「地域課題をデジタルで解決したい」というマインドを持つ方と一緒に、「ひろぎんグループ×デジタル」の最適解を見つけていきたいですね。

異業種出身者が、ひろぎんでキャリアを築ける。そのモデルケースを増やしていきたい。

<瀬尾氏>どちらの部門も求めている人材は「異業種出身者」なのですが、銀行や金融サービス業界以外のビジネスパーソンにとっては、銀行というのは転職先として選択肢に入らないことが多いのではないでしょうか。実際私たちもこれまでは異業種から人材を迎え入れる機会は多くありませんでした。ただ、ここ数年で少しずつそうした機会が増え、入社後に活躍し、今や当行にとって無くてはならない存在になってくれている人材が増えてきました。推進室の岩田からも話がありましたが、“銀行を知らない”方にとってはカルチャーがうまくマッチするか、処遇を含めた制度面がうまくマッチするかといった懸念もあると思います。それらをクリアするために、より柔軟性を持たせた制度を新たに作ったり、カルチャーを含めて変化させる取り組みを前のめりに進めています。今回のインタビューにも同席してもらいましたが、現在私たちと一緒になって採用に携わってくれている人事担当者も異業種出身者です。そういった“モデルケース”を増やし、より多くの方に「ひろぎんでのキャリア」を考えて頂けるようになると嬉しいと思っています。そして、迎え入れた方が当行でキャリアを伸ばして頂き、その結果として新たなサービスやビジネス、価値が生まれ、冒頭でお話したような「地域総合サービスグループ」として発展していく、それが理想の形です。

編集後記

2020年10月に発足した「ひろぎんホールディングス」。そのグループ全体のデジタル戦略を担うキーマンであるお三方にお話をお聞きしました。昨今のニュースでも「地銀が生き残るためには」といった見出しをよく目にします。従来とは異なる銀行の在り方が求められる中で、ともすると悲観的に捉えてしまいますが、お三方からは「変革できるチャンスだ」とポジティブなエネルギーが出ているのが印象的でした。デジタル領域に活路を見出し、プロフェッショナルを招き入れることで様々な戦略を自前で推進していく。まさに採用によって経営そのものを変えていこうという気概に溢れていました。加えて印象的だったのは、「全国に打って出ようというつもりはない。あくまで私たちは地域金融として、地域の課題解決や活性化に貢献していく」という瀬尾部長のお言葉。デジタル活用を進めながらも、“根っこ”にある「地域とともに」という思いが強く感じられました。私も広島で生まれ育った人間として、どこか安心するとともに、「これからどんなサービスを提供してくれるんだろう」と楽しみになるようなインタビューでした。

文:リージョナルスタイル認定コンサルタント 原田 昌和

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