採用が経営を変えた瞬間 コーポレート本部 本部長 岡田朋城氏

東北の方々の真ん中にあるために
ファンコミュニティーを深めたい

株式会社楽天野球団 / コーポレート本部 本部長 岡田朋城

Vol.93

株式会社楽天野球団
コーポレート本部 本部長 岡田朋城

宮城

公認会計士として、大手監査法人系フィナンシャルアドバイザリー会社にてM&Aアドバイザリー業務を経験。2011年に楽天野球団の事業に共感し入社。2017年より現職。株式会社楽天野球団と楽天ヴィッセル神戸株式会社の管理部門を統括。

球団創設時の想い。

私たち東北楽天ゴールデンイーグルスは、球界から惜しまれながら近鉄バファローズが撤退して新しい球団ができる、という中で2004年に創設されています。当時のスポーツビジネスがどうなっていたかと言えば、一部の人気球団を除き、チケット収入はあまり無いような状態で、チーム運営はスポンサーや親会社に支えられていました。今ほどはお客様がスタジアムに来ておらず、本業の収支では赤字が当たり前の状態で経営が成り立っていなかったのです。ですから私たちは、まずスポーツビジネスで当たり前に収益が上がるようにやっていこうと、設立当初から「健全経営」を掲げてきました。

日本では、スポーツとお金を結びつけることへの抵抗感が根強く存在しているように感じますが、スポーツチームも自分たちが提供するサービス、価値に見合った収益を上げ続けなければ成長はおろか、存続することもできません。強いチームを作る、お客様に感動していただくようなサービスを提供する、スタジアムをボールパーク化するための投資をする、など、すべて収益を上げ続けなければ実現できません。「健全経営」は、スポーツチームがサスティナブルな存在であるための、必要最低条件であり、スポーツビジネス先進国である欧米では当たり前の考え方になっています。今では当たり前になった球団による球場の運営(球団と球場の一体運営)も、当時は異例でしたが、経営上、最も根幹をなす要素として実現させたのには前述の背景があります。こうした、スポーツビジネスにおいて前例の無い事を積み重ねてきたのが弊社です。「健全経営」「地域貢献」「強いチーム作り」それぞれの向上とバランスが我々の経営の根幹にあり、創設以来これをずっと貫き続けてきました。

スポーツビジネスの収益構造を変える取り組み。

楽天イーグルスの歴史は「野球を通してエンターテインメントをやる会社」として当たり前のビジネス収益を生み出し、健全経営を実現するための取り組みの歴史です。ITベンチャーが球団を運営することによって、どんな変化、貢献ができるか、というチャレンジを業界外の多様な社員たちで慣習にとらわれずにやっていこう、という事をこの10年やってきました。トラックマンが取得したデータのチーム戦術への利用や、選手の技術向上などもそうですし、そうしたデータを利用したVRコンテンツの開発など、スポーツエンターテインメントの有り方に一石を投じてきたと考えています。

現在のスポーツビジネスのトレンドは「スタジアムに人をどう集めてどのように楽しんでいただくか」ですが、お客様に満足してもらって観客一人あたりでどれだけ売上を作れるか、つまりレベニューポートフォリオの真ん中にお客様を置き、スタジアムでいかに収益を生み出すか、という考え方は私たち楽天野球団が「観客の方々にいかに喜んでもらえるか」を地道に考え抜いてきたことが反映されていると思っています。

楽天野球団が、グループやマーケットに与える影響。

当初は、「野球」という枠組みの中で、海外から新しい技術や手法を導入しながら、いかに目に見えるサービスや面白さの向上が図れるかに主眼をおいてきましたが、ここ数年は、例えばキャッシュレス/QRチケット入場など、楽天グループのノウハウを活かしてできるものをどう社会実装していくかも考え実践しています。2019年に導入したキャッシュレスシステムはこのスタジアムでは当たり前になっていますが、物理接触がないサービスなので、結果的にコロナ禍での安心・安全につなげる事ができました。

また、例えば、楽天Edyが立ち上がった際には、東北エリアのシェアが非常に高かったのですが、それは楽天イーグルスが顧客向けに実践してきた活動が、仙台を中心に浸透していたからという背景もあったと思います。2004年の球団設立以降、この10年で親会社である楽天の知名度が著しく上がったというデータもあります。楽天という会社を日本のほとんどの人が知っている状態にするために、マーケティングの観点からも私たち楽天イーグルスが果たした役割は大きいと思います。

楽天野球団を支える人材。

社内を眺めると、仕事、地元、球界、球団と、何がしかにコミットメントが強い人材がハイパフォーマーになっています。楽天グループ、知名度の高い野球関連の仕事という事で、弊社をとんでもなく大きな会社と考える方もいますが、我々は地方に拠点を置くわずか120名の会社です。一人の仕事が組織全体に与える影響は大きくスピードも速い。ですから、それぞれに尖った人に居てほしい。自律性、自走性は重視しています。自分の頭で考え、自分でインプットして、自ら成長するプロフェッショナル意識の高い人です。業界問わず、とりわけ自分から勝負してきた人、競争環境に身を置いてきた経験を重視していますね。逆に、120名の会社ではあるものの私達の仕事はすぐに影響力を持った形で世の中に出ていきます。最近新卒の女性社員が、1試合50万円のVIPチケットを企画してネットニュースのトップに大きく取り上げられましたが、地方企業でありながら、こうした成果が体感できるのは弊社ならではだと思います。「とりあえず小さくやってみよう」が我々の風土で、バッターボックスに立つことを奨励します。バッターボックスに立たないと打率はゼロのままですから。仙台では、これまでの経験が活かせないのではないか、可能性が狭まるのではないか、と感じている人も多いかもしれませんが、弊社では自らに準備さえあれば機会は与えられる場が多くあります。

東北の方々の「心の真ん中」に居続けるために。

健全経営で「スポーツを軸としたエンターテインメントカンパニー」を目指してきたのは先に述べた通りで、グループシナジーにより先進的な取り組みをしてきたと思っていますが、最も大事にしてきたのは、「拠点を置くこの東北への地域貢献」であり、「コミュニティー作り」です。創立以来ずっと「日本一愛される球団」を目標とし、東北の中で愛される球団として、ファンコミュニティーをいかに大きく、深く作っていくかを最も大事にしてきました。東北の全小学1年生に帽子を配り続けたり、「TOHOKU SMILE PROJECT」などの震災後の取り組みもそのような背景から生まれています。今後も、より一層東北の方々のコミュニケーションの真ん中に存在していたいと思っています。例えば他のエリアのどこかで初めて出会った東北の方同士が、最初何を話したらよいか分からない時に、自然と楽天イーグルスの話題で打ち解ける。そういった存在になりたい。東北の方々の心の中に、楽天イーグルスが自然と存在している状態になりたい。まだまだ道半ばです。これまではいかにスタジアムに来て頂くか、を追求して来た訳ですが、アフターコロナの世の中で、スタジアムに来られない方々も含めていかに満足してもらえるか、そういったファンコミュニティーをいかに作るか、オンラインとオフラインを融合させながら追求していくつもりです。

編集後記

岡田本部長は「コミットメント」という言葉を何度もおっしゃります。そして「自社は地方の小さな企業であるのだ」という言葉。今回、インタビューの機会をいただき、私が一番印象に残ったのは、最も大事にしてきたとおっしゃっていた「地元・東北の方々」への、岡田本部長自身のコミットメントです。ビジネスモデル上大事なのは言うまでもありませんが、東北に拠点を置く球団として「日本一愛されるチームになる」というスローガンの元、楽天イーグルスに集う方々の心にセットされているものなのではないか、と感じます。そして「まだまだ道は半ばだ」と語る本部長からは強い意志も感じました。こういった方々が集まっている楽天イーグルスは、今後より一層「東北の真ん中」にある存在であり続けるだろう、と確信した取材となりました!

文:リージョナルスタイル認定チーフコンサルタント 大石 豊

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