採用が経営を変えた瞬間 取締役事業企画本部長 寺﨑 正勝(てらざき まさかつ)氏

仕事を「志事」として。
新しい時代を切り拓く挑戦。

九電みらいエナジー株式会社 / 取締役事業企画本部長 寺﨑 正勝(てらざき まさかつ)

Vol.84

九電みらいエナジー株式会社
取締役事業企画本部長 寺﨑 正勝(てらざき まさかつ)

福岡

福岡市生まれ
昭和57年 九州電力株式会社 入社
平成19年 同社 経営企画室 地域戦略グループ長
  22年 同社 社長室 副室長(経営政策担当)
  24年 株式会社九電ビジネスフロント 代表取締役社長
  26年 九電みらいエナジー株式会社 取締役企画本部長

「SPEED&CHALLENGE」- 変化はビジネスチャンス。

当社は、九電グループにおける再生可能エネルギービジネスを拡大していくため、2014年に設立され、今年で5年になります。九電グループでは、再エネ、九州域外、海外という3つの成長戦略を掲げていますが、当社は再エネの中核会社として位置付けられています。2016年からは関東エリアを中心に電力販売(小売り)を開始、再エネとならぶ事業の両輪として成長しており、5年経ってようやく、これまで蒔いてきた種が芽をふき、つぼみを付けつつある段階ととらえています。
当社の従業員は現在160名程度であり、約7割が九州電力本体からの出向者、3割が直接雇用の社員で構成されていますが、今後の事業拡大を見据えて、会社の成長を担う中核人材として直接雇用社員を増やしていく方針です。採用は随時行っており、すでに多くの新しい仲間をお迎えしています。
将来的には、いわゆるSDGsであるとか、地球環境にやさしい次世代エネルギーをどう作っていくか、どう次の時代に繋げていくかという観点でのビジネス展開を目指しています。新しい時代を自分たちで切り開いていこうという気概で作った会社ですので、そういう気概を持つ方にこれからもジョインしていただきたいですね。

当社は、仕事を進めるうえで「SPEED&CHALLENGE」という価値観を大切にしています。再エネ市場はドラスティックに変化していますので、その変化についていくだけでなく、その先の変化を先取りした事業戦略が必要となります。そのためにはスピードだけではなく、チャレンジ精神も不可欠であると考えています。ダーウィンの進化論では『生き残るのは強い種でも賢い種でもなく、環境の変化に対応できる種である』ということが言われますが、そういう変化に対応できるような人、変化をビジネスチャンスとして掴める人を、我々は求めています。

「フロントランナーであり、ゲームチェンジャーになろう」

今日の再エネビジネスの隆盛には、やはり、再生可能エネルギーの普及を目的とした政策的な後押しがあったことが大きい。企業が投資を行うためには、当然ながら「マーケットがある」ことが重要ですが、発電事業は投資額が大きく、リターンも長期スパンで考えなければならない。再エネに関するマーケットは国のエネルギー政策によって意図的に創られた部分も大きいわけですが、このような政策的なバックアップが事業環境の見通しを与え、投資を促進しているわけです。設立当時、「このチャンスの芽を逃さないぞ」「今やらなければいつやるんだ」という思いが強かったのをよく覚えています。私は設立当初からのメンバーですが、フロントランナーになろう、を合言葉にみんなで走りながら考え、ここまでやってきました。我々はさらに、再エネ分野の「ゲームチェンジャー」になっていこうと言っています。先を走ることに加え、さらにその先を見据えたビジネスを切り拓いていく、このような気概を「フロントランナーであり、ゲームチェンジャーになろう」ということばで表現しています。

電力業界全体においても、全面自由化以降、これまでのビジネスモデルとは異なる新しい動きがあちこちで出ていますが、弊社の誕生はその先駆的な動きのひとつであったろうと思います。電気事業は、生活や産業に不可欠な電気を安全かつ安定的にお届けするだけでなく、環境負荷の低減や経済性といった課題にも同時に応えていかなくてはなりません。これは非常に難しい連立方程式で、それらすべてを満足する魔法のような解法は残念ながらありません。それぞれの課題のバランスを考えながら知恵を絞って妥当解を見出していくしかありませんが、これまでの事業や地域の枠にとらわれず、ワールドワイドに考え、ESG投資やSDGsなどの社会的ニーズ、地球規模の問題解決に貢献する事業展開を進めていかなければ、電力会社の将来はないと考えています。電気事業の枠組みについても、小売りの全面自由化や発送電分離などいわゆる電力システム改革が着々と進められており、そのなかでのコンペティションにどう生き残っていくかも重要なテーマです。そういったなかで再エネのトレンドをつかみ、その先を読んで、早い段階から経営資源を効果的に投入していくことが必要であると創業以来考えつづけています。この市場には大手電力会社を始め、他業種からも多くのプレイヤーが参入していますし、競争も変化も厳しくなっています。ここでも大切なのは「SPEED&CHALLENGE」です。

海外で実感した日本の素晴らしさ。郷土に貢献する仕事がしたい。

私自身の話を少ししましょう。少し古い話になりますが、大学時代にバックパッカーとしてヨーロッパを放浪したことがあります。あるとき、ユースホステルに宿泊した際、アルゼンチン、カナダの人と相部屋になりました。そこで気付いたのですが、みな、バックパックに自国の国旗を付けているのです。私は付けていなかったので、「なぜ日本人は付けないの?愛国心はないのか?」と聞かれました。そう言われて初めて、日本の良さが見えてくるようになったのです。街並み、社会、気質・・・。そういった良さをあらためて実感したとき、自分の郷土である福岡に貢献する仕事がしたいと考えるようになっていきました。そして就職先を考える頃になり、同級生の父親が九州電力に勤めていたこともあり、九電について調べるようになりました。世の中になくてはならない電気をつくっている、また地域振興にも取り組んでいる、ということで興味が深まりました。

九電に入社してからは、いろいろなプロジェクトを担当させてもらいました。後に副社長となった当時の上司は、厳しかったですが、いろいろな経験をさせてくれました。外部出向や、その先でプロジェクトマネージャーとして事業の立ち上げを経験することで、社外人脈も形成できましたし、いろいろな考え方を学ばせてもらいました。もともと「型にはまった“会社人間”にはなりたくない」「とんがった人になりたい」という思いがありましたので、ベースである九電の価値観に、社外での経験が合わさって、今の自分の仕事のスタイルやオリジナリティが形成されたのではないかと思います。

「ここは新しい会社。何をやっても構わない」

九電みらいエナジーには企画本部長として最初に配属されたのですが、初出社の日、社長の訓示後に全社員を前にしてこんな話をしました。

「ここは新しい会社。またとないチャンスをみんなで生かしていこう。
九電の良いところは持ってきてもいいが、“悪いところ”は持ってきてはいけない。
どこかから指示をされて仕事をするのではなく、皆が考えながら仕事を進めよう。
何をやっても構わない。その代わり責任は私が取る」

この話は人事異動のある毎年7月に、新しく来た社員、そして自分にも向けて現在も話しています。それは取締役であり事業企画本部長である自分の務めであると思っています。普段からよく社員にいろいろ声をかけて回るのですが、そうすることでコミュニケーションが円滑になり、ネガティブな情報も早くキャッチできるようになります。今年60歳になりましたが、いくつになっても、お役に立てるところがあれば喜んで取り組ませてもらいたいと思っています。

出向社員とプロパー社員が生み出す化学反応。

ここまで何度か「気概」という話をしましたが、人を採用するときにも大切にしているものがあります。例えばその一つ、自分の「信念」や「志」を持つ人と一緒に仕事がしたいということです。「仕事を“志事”として取り組める人」とも言えるでしょう。冒頭でもお話したように、当社には九電からの出向者が多く在籍していますが、出向者はこれまで育ってきた九電の価値観がどうしても出てしまいます。それが良く作用することもあれば、そうでないこともありますが、そこに、さまざまな経験を積んできた人や信念・志・価値観を持つ人との接触があることによって、それが刺激となり、化学反応のようなものが起こってきていると感じています。これはとても興味深いことです。出向者は出向期間が終われば本体へ帰任しますが、この会社で受けた刺激は彼らの成長にも間違いなくつながっていると思います。異なった文化やバックグラウンドを持つ人々が同じミッションで協働することで、出向社員・プロパー社員双方にとってよい刺激が生まれ、わが社独自の風土が生まれつつあると実感しています。

例えば、鉄道会社から転職してきた広報の女性がいるのですが、「攻める広報」と自認してアクティブに仕事をしてくれています。与えられた仕事をまっとうするのはもちろん、自分なりに考えていろいろ提案してくれます。例えばこのレゴブロックのジオラマ(写真)も彼女の発案です。再生可能エネルギーの主要5電源(太陽光、水力、地熱、バイオマス、陸上・洋上風力)の発電所を約8万個のレゴブロックで表現しており、福岡市科学館に出展しました。こういった自由な発想は、これまでにはなかなか出てこなかったものです。ことあるごとに社内の様々な課題に対応したプロジェクトチームを組織したり、ワークショップを行っているのですが、できるだけプロパー社員が主体になるように心がけています。「自分の会社なのだから、自由にやって良い」と言っていますし、彼らの柔軟な発想や挑戦的な取組みは出向者にとっても大きな刺激となっています。

スピード感のある中で、さまざまな経験を積んでほしい。

こうした化学反応を会社としても後押しするよう、人事の評価制度や処遇制度も変えました。例えば、以前は年功序列色が強かった賃金制度を見直し、しっかり頑張って成果を出した社員に対する処遇を厚くするようにしました。社員の満足度調査では「まだまだ物足りない」という声もありますが(苦笑)、申し訳ないと思う反面、とても頼もしく思っています。成長したいという社員の意欲に対しては、研修や海外出張といった機会を提供し、さらに社員に対する働きかけを充実させていきたいと考えています。これまで厳しいこともいろいろ言ってきたと思いますが、それに見事にこたえてくれている社員に感心し、また感謝しています。私自身がこれまでそうであったように、社員にはたくさんの経験を積んでほしい。新しいことをやっている会社なので、当然、苦労はあります。これまで多くのプロジェクトを立ち上げてきましたが、なかには実現が危ぶまれるような局面も何度かありました。その都度、みなの知恵と努力で乗り越えてきましたが、それが社員の成長とやりがいに確実につながっています。これからも社員の皆さんにはそのような機会を、これからお迎えする方々を含めて、与えていきたいと思っています。

編集後記

九電グループにおける再生可能エネルギービジネスを拡大していくため、2014年に設立された同社。現在では九州域内にとどまらず、広島や兵庫、福島といったエリア、また台湾など海外にも事業を拡大しています。これまでの化石燃料や原子力に代わる発電は、今まさに全世界が直面している課題であり、同社にとってはさらなる事業発展のチャンスが多い状況と言えます。それをうまくキャッチアップすることはもちろん、さらにその先を読んで手を打っていくという寺崎様のお話の熱量に感激しました。九電本体からの出向社員とプロパー社員が力を合わせ、全速力で事業を推進する社内には、「大手企業のグループ会社」と思わせない、まさにベンチャーそのものといった雰囲気が漂っています。未来のエネルギーを支える「人のエネルギー」がここにはあると強く感じるインタビューとなりました。

文:リージョナルスタイル認定コンサルタント 植田 将嗣

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