採用が経営を変えた瞬間 代表取締役 富田 純弘氏

徳島発、「世界が注目する
スペシャリティ企業」を目指す。

富田製薬株式会社 / 代表取締役 富田 純弘

Vol.81

富田製薬株式会社
代表取締役 富田 純弘

徳島

徳島県鳴門市出身。1986年8月富田製薬株式会社に入社。取締役、専務取締役を経て、代表取締役に就任。

創業126年、製薬業界を支えるパイオニア

当社は、1893年(明治26年)に創業し、苦汁(海水成分)を原料とした国産初の塩基性炭酸マグネシウムの製造から事業をスタートしました。食塩はもちろんのこと、硫酸マグネシウムや塩化カリウムなどを製造し、製薬業界の発展に寄与してきました。現在は、人工透析に使用される粉末透析剤が基幹事業となっており、医薬品原料および医薬品添加物、食用ミネラル塩など、独自開発した製品を製造・販売しています。今も昔も「塩」にまつわる無機化学のパイオニア的な存在です。そんな当社の特徴は、製造技術力と研究開発力にあります。異物を完全に除去した上で、各企業のニーズを満たす高純度の製品をつくるには、原料自体の制御から製品の加工・粉砕・造粒・製剤に至るあらゆる技術が必要です。そんな当社独自の粉体製造技術は高い応用力を持っており、高品質な製品を生産する上で欠かせないため、各企業から高い評価を頂いています。また、研究開発に力を入れており、透析療法に用いられる粉末透析剤を他社に先駆けて量産化したのも当社です。透析液の粉末化によって、医療現場の労力が省力化されるなど、日本の血液透析の拡大に貢献してきました。今では透析領域において国内トップクラスのシェアを得るまでに成長するなど、当社の粉末透析剤が多くの患者様に使用されています。

創業者のDNAを受け継ぐ、研究開発チャレンジ型企業

明治時代、イギリスから輸入していた塩基性炭酸マグネシウムの国産化を日本で初めて実現したのが創業者の富田久三郎です。オランダの生物学や分析学を独学で学び、1877年(明治10年)に自ら製法を生み出しました。彼のモノづくりに対するこだわりはとどまることを知らず、原料である良質な苦汁(海水成分)を十分に確保できる環境を求め、12年もの歳月をかけて日本中の塩田を調査し続けたのです。そうして1893年(明治26年)、富田家ゆかりの地である静岡県から、良質な苦汁を求めて徳島県鳴門市へ家族4人で移住し、「富田海産塩類製造所」として創業しました。今日の鳴門市が製薬・製塩の街として発展してきたのは、当社の影響力が少なからずあったはずと考えています。「まだ世の中にないものを生み出すこと」「品質への徹底的なこだわり」という当社が掲げる研究開発型チャレンジ企業の原点は、創業者である富田久三郎のDNAであり、今もしっかりと受け継がれています。

家族である従業員とともに、物心両面の幸福を追求

長い歴史を持つ当社ですが、その道は決して平坦なものではありませんでした。天災に見舞われて工場が被災したり、大口の取引先が倒産したりと、会社存続の危機に直面したことも正直あります。それでも今日まで会社が続いているのは、会社を牽引し、危機を乗り越えるために踏ん張ってくれた従業員達がいてくれたからです。そのような歴史があったからこそ、当社にとって従業員は、苦楽を共にする家族同然の存在だと考えています。働いてもらう以上は、仕事にやりがいを感じられる環境を作ることが経営者としての私の役割。従業員一人ひとりが自分の携わった仕事が、世の中に価値を提供していることを実感できることが、働く上で何よりのモチベーションや誇りに繋がると思いますし、家族に胸を張って自慢できるような仕事をしてほしいと願っています。「全従業員の物心両面の幸福を追求し、人類の健康と生活に役立ち、地域社会および世界に貢献する」が、私のフィロソフィーであり、「会社健康経営」をテーマに掲げています。

研究開発と海外進出で未来の医療を支える

医療の世界は日々変化を続けています。透析人口自体の減少に加え、医療保険制度への負担や薬価抑制の流れ、再生医療の研究が凄まじいスピードで進んでおり、日本の透析市場はだんだん縮小していくものと考えられます。そこで、粉末透析剤に変わる第二の柱を構築するために、新薬素材の研究開発とグローバル展開に注力しています。世界の新薬の研究開発は主に先進7カ国で行われているため、アメリカのニュージャージー州に拠点を開設するなど海外市場開拓を進めています。世界の製薬会社と新薬研究において、開発フェーズから関わり、当社独自の粉体製造技術を新薬や製剤の開発に活かして頂くことを目指しています。新薬により、今まで治療困難とされてきた病気が治療可能となり、そしてより多くの患者様が救われるようになれば、世界の人々の健康への貢献に繋がります。「富田製薬ならではの製品を生み出すこと」つまり、他社には真似できない、オンリーワンの製品を創出していくことが当社の存在価値であり、当社の目指すスペシャリティ企業のあり方です。

グローバル展開への土台を築く変革期

鳴門の地で創業から126年の歴史を積み重ねてきた企業として、「世界が注目するスペシャリティ企業」になることが、地元である徳島県発展の一助を担うと考えています。現在当社は第四次中期経営計画にて、世界と戦う土台を築くための『仕事の進め方改革』『モノ作りの環境整備』を推進しています。まさに事業が飛躍するための正念場であり、この変革を共に推進してくれる人材を求めています。今後のグローバル戦略の推進にあたり、語学力や技術力はもちろんですが、会社のステージを変える大きな変化を目指しているため、周囲を牽引できるチャレンジ精神を持った方を求めています。当社の既存のやり方や価値観に疑問を持つこともあるかもしれませんが、そうした厳しい目を向けてくれる方を歓迎します。当社は「素直でまじめ」な風土。新たに仲間となってくれる方には、与えられることだけに目を向けるのではなく、自ら現場を見渡し、積極的に声をあげ、提案をしていってほしいと思います。

編集後記

今回のインタビューでは、富田製薬の歴史と従業員に対する想いが非常に印象的でした。明治時代に静岡から徳島への移住を決断し、国産初の製品を生み出してきた創業者。そのDNAを受け継ぎ、「富田製薬ならではの製品」を生み出し続けてきた「研究開発力」や「チャレンジ精神」こそが同社成長の源泉であると改めて感じました。そして、創業126年の歴史の中に苦難もあり、従業員と共に乗り越えてきたからこそ、従業員を「家族同様の存在」として考える富田社長の強いフィロソフィーを感じられる取材となりました。また、透析領域ではトップクラスのシェアを持つ同社ですが、富田社長自らが強い危機感と覚悟を持って研究開発とグローバル展開を推進されています。この変革期に「主体者」としてチャレンジしたいという方にご推薦したい企業です。

文:リージョナルスタイル認定チーフコンサルタント 吉津 雅之

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