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落ち着いた環境でグローバル規模のチャレンジングな仕事を。

タカノ株式会社
常務取締役 大原 明夫

長野 更新日:2019年1月23日

昭和46年 日本興業銀行に入行後、平成13年より同社入社。企画室長、経理部長を経て平成19年同社常務取締役に就任。
※所属・役職等は取材時点のものです。

バネからエレクトロニクス、医療福祉まで多様な事業を展開。

タカノ株式会社はバネ、オフィス家具、画像検査機器、電磁アクチュエーター、福祉医療機器など、多彩な事業を展開しています。始まりは昭和16年。バネ製造の会社として、東京の向島で創業しました。しかし戦時中に、取引先の日本発条さんが疎開をすることになり、当社もそれに付いていく形で、長野県宮田村(現・長野県上伊那郡宮田村)に移ってきました。創業者が山梨出身なのですが、このあたりの風土が山梨に似ていて気に入り、そのまま本社を移転して工場も作ることになった訳です。

その後、OEMでコクヨさんのオフィス用椅子の開発・製造を始めました。しかし、OEMだけでは会社の成長性に欠けると考えたことから、事業にも幅を広げるため、開発から生産、販売までを自社で行うエレクトロニクスや福祉・医療関連に進出してきました。会社の規模の割に多様な部門を抱えているのは、会社の存続と成長性を確保し、お客様のニーズに貢献するための展開であったといえます。現在はオフィスファニチャーと画像検査装置が主力事業になっており、それぞれ売り上げの4割ずつを占めていますが、経営的にはもうひとつ柱が欲しい。そこで市場拡大が見込めるアクチュエーターやヘルスケア、医療関連に非常に力を入れているところです。

中核はものづくりですので、本社機能は製造現場の近くにあったほうが利便性が高い。そのため開発部門も経理企画部門も、この本社付近に置いています。一方、営業部門や海外部門の拠点は東京営業所や大阪営業所になります。将来的には、人材採用のためにも、それらの地区の充実も必要であると考えています。又、横浜にあったバネ工場は研究開発棟に衣替えし、今後はそこに開発の一部の人員が移る予定です(2019年5月)。

常に革新的なものを。そしてシェアNo.1を狙う。

既存事業は環境の変化があったり、成熟化が進みますから、常にそうしたところを見直すことが必要です。当社では2021年までの5ヵ年の中期経営計画「Innovation68」を策定して、挑戦を続けています。何かを始めるにしても、普通の仕事の延長では差別化できませんから、やはり革新的なもの、あるいは原理原則が違うものを世に出していこうと考えています。同時に、コストダウンやロボット導入による合理化といった守りの面も必要ですから、その両面でチャレンジしています。

いろいろなことを手掛けているので、ドメインがどこにあるのか分からない、という話も耳にするのですが、いまはそれに捕らわれず、お客様のニーズに合ったものを、時代に応じて出していく。そして、それぞれが存在感を出して、シェアNO.1あるいはオンリーワンになることを狙っています。

こうした進め方は、経営面から言えば、ひとつの産業が不況になっても他の部分で補える、というメリットがあります。ずっと創業のバネだけに固執していたら、今は中国や東南アジアから安いものが入ってきていますので、会社が立ち行かなくなっていた可能性があります。ですから、事業を多角化してきてよかった、という思いはあります。

大学との共同研究や中途採用が新境地を切り拓く鍵に。

これまでも、全く新しい分野に進出することが多くあったのですが、その際に最も問題になってきたのが、それに携わる人材の育成です。

そのために取り組んできた方法のひとつが、大学との共同研究です。当社は1980年の終わり頃から産学連携に取り組んできました。例えば、アグリ部門で販売している赤い花のソバ「高嶺ルビー」という品種は、信州大学農学部との共同研究で生み出したものです。同学部の大学院に社員を派遣して研究を進め、その社員は博士号を取って会社に戻り、引き続き研究を続けて事業化に成功しました。この種によって県内各地で美しい赤ソバの花畑が生まれ、開花シーズンにはそれに関連したイベントが行われたり、またそこに観光バスが来るようになったり、と、地域貢献という側面も叶えられた事業だと思います。そのほか、画像検査装置なども、大学との共同研究により事業化が出来ました。

もうひとつの方法が中途採用です。中期経営計画を進めていると、いろいろな局面で足りない部分を補っていく人材、あるいは得意分野をもっと高水準に伸ばしていくための人材が必要になります。そういう場面で、他社で10年、20年の経験がある方に入っていただくと、やはり良い影響が生まれます。

たとえば、英会話にしても、当社が欧米に拠点がなく、実務での語学経験を積む機会が少ないため、ネイティブの方々と対等にビジネスの議論ができるスキルは高くありませんでした。そこに、海外勤務経験があってビジネススキルも高い、ネイティブレベルの語学力を持つ人材が入社してくれたことで、各段にレベルアップできたと感じています。

調達部門にも最近、中途で経験者が入りました。当社は各部門に調達セクションがあるのですが、その社員はそれらを全てまとめて標準化、また統括する役割を担っています。これまで原価企画や海外調達に弱い面があったのですが、来てもらったことですごく刺激になった、という声がありました。他社での勤務経験がある方に入ってもらうと、自分たちのレベルで充分と思いがちなところに、世間の基準との違いを気付かせてもらえる、というメリットもありますね。

人が企業の全て。迷いなくチャレンジできる環境がここに。

当社の良いところは、チャレンジングな姿勢です。また、生産会社としてスタートしているので、生産技術や品質はもちろん、お客様からの注文や要望に対するレスポンスの早さなども、信頼につながっていると思います。品質を維持するポイントや、要望に対してどこを工夫すればいいのか、ということについて、創業時からのノウハウの積み重ねがあるため、素早い対応が可能です。そこがベンチャー企業と違うところですね。また、社員はこの地域の人が多いので、仲が良くてチームワークが良いというのも特色だと思います。

いろいろな製品を作っている会社なので、新しいもの、付加価値のあるものを作りたいという方にとっても、何かしらフィットする分野があるのではないかと思っています。人間尊重、人が企業の全て、というのがモットーで、人の長所を見て育てていく、という社風です。会社の歴史の中で、基本的に人員整理的なこともやったことがありませんし、社員は最後まで守る、というポリシーがあります。地域に根差した企業なので、そこに対する責任感も強いですね。雄大な長野の自然の落ち着いた環境のなかで、チャレンジングな仕事ができる。それがタカノの良さだと思います。

編集後記

コンサルタント
中山 祐二

地元では誰もが知る会社ですが、「一体何を作っている会社?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。タカノ株式会社はコアとなる事業をあえて持たず、ひたむきに新しい分野にチャレンジし続け業績を伸ばしてきた企業です。バネの製造からスタートし、今では数えきれないほど多くの新製品を生み出し、そのどれもが競合に負けない高いレベルで商品化されています。 

常務のお話から、現状にとらわれない攻めの姿勢を続けていく為に、キャリア人材が会社にもたらす影響が計り知れないほど大きいということを改めて感じさせられました。大自然の穏やかな環境の中、思い切りチャレンジングな面白い仕事をしたい。そんな方にご推薦したい企業です。

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