採用が経営を変えた瞬間 頭取 笹原晶博氏

金融事業における唯一の差は人材
ゆえに銀行の最大の財産は人材

株式会社北海道銀行  / 頭取 笹原晶博

Vol.18

株式会社北海道銀行 
頭取 笹原晶博

北海道

1957年2月21日生まれ(59歳)
札幌市出身。北海道大学教育学部卒業。
1979年、北海道銀行に入行。1996年、営業推進部営業企画室室長。

2003年、執行役員(営業企画担当)。2005年、取締役執行役員常務(営業部門長)。

2010年、代表取締役副頭取、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ取締役。

2012年、株式会社道銀地域総合研究所代表取締役社長。

2015年、代表取締役頭取、株式会社ほくほくフィナンシャルグループ代表取締役副社長。

地方創生元年

アベノミクスの新しいテーマとして「地方を元気に」と言われるようになりました。昨年が地方創生元年だったと思います。私は同じ昨年、頭取に就任しました。アベノミクスで言うところの、全国の地方が抱える課題と、当行が意識する課題が一致したと考えています。私たち銀行の仕事には、預金、融資、為替という3つの基本的な業務があります。今は、この3つの業務にとどまることなく、地域金融機関として、地域そのものや地域の企業が発展するための役割を果たすべきだと思っています。今や、3大都市圏を除くどの地方も人口減少と高齢化という悩みを抱えており、北海道では札幌はまだ良いとして、地方は地盤沈下してきています。私たちはそこに根を張って活動している以上、3大業務のみならず4番目の業務として「地域や企業の役に立つ」ことを最大のテーマに掲げていることは必然なのです。

 

昨年は、地方の自治体がどういう成長戦略を描くかをプランニングする1年でした。そのプランニングに、北海道銀行として道銀地域総合研究所含め、積極的に関わっていくというアプローチをしました。結果、60以上の自治体の戦略策定に参加することができました。今年は、各自治体がそれを実行に移す年になります。どのようにプランを実現していくか、いよいよ私たちが持っているネットワークや培ったノウハウを生かし地域に貢献することが期待されています。

 

残念ながら、全ての自治体にユニークな産品や魅力ある観光資源があるとは限りません。また、自治体だけが動いても、プランの実現はできません。実際に原動力となるのは民間企業であり、地域に住む人です。そうした中で私たち銀行自身は産業を創造していける訳ではありませんから、主体にはなれません。しかし、地域や産業をサポートする立場にはなれます。いかにして地域の企業や人に主体的に動いてもらえるようにできるか、その動機付けをし、銀行としてあらゆる資源を投入していきます。地域が衰退していくさまを黙って見ているわけにはいきません。地域とともに人口減少と戦っていきます。

理念「地域共栄」「公正堅実」「進取創造」

当行は昭和26年3月に創業しました。前年の昭和25年8月、全道の商工者の大会が旭川で開かれ、そこで“新しい銀行を作るべし”という採決がされました。その声を受け、採択からわずか半年後に新銀行として当行が誕生したのです。もともと官製銀行としての北海道拓殖銀行はありましたが、それ以外の民間銀行が無かったため、新銀行の需要は凄まじく、創業の年に全道に38店舗を展開するに至りました。当行は、道民の方が声を上げ、道民の方が出資してできた“道民の手作り”の銀行。だからこそ、私たちの存在意義は、当時も今も道内の民間企業に潤沢に資金を供給し、理念である「地域共栄」を担うことにあります。これは当行が創業からいままで持っている理念です。

 

創業当時、人口は増加し、地域は活性化していく時代でしたが、今はその逆回転が起こっています。人口は減少し、地域の経済力は落ちていく。この逆回転に対し、ともに戦っていくことが、今までお世話になった地域への恩返しにもなり、それこそが現代の「地域共栄」になります。「公正堅実」とは信用を旨とする金融機関として当然のことで、文字通りです。当行の特徴である「進取創造」については、当行は創業60年以上経つものの、全国の銀行の中では若い方です。多くの地方銀行は創業100年を越えています。当行はバイタリティあふれる若い銀行として、何事にも積極的に取り組み、何事もフラットに考える文化を持っています。今、厳しい局面だからこそ、「進取創造」を旨とし、自らの姿をも変えていかなければならないと思っています。

「実質主義」というDNA

以前から、積極的に中途採用は行っており、異業種からも採用をしています。金融系出身者に限らずマーケティングの経験者や、リタイヤした専門性を持った人材など、色々な方に入行していただいているのが当行の良いところだと思っています。当行には「実質主義」という考え方があります。例えば、人事発令は書面もなく儀式としても行わない。虚礼廃止です。職員間の年賀状のやり取りや付け届けのような虚礼はしませんし、学歴や卒業校による学閥の文化もありません。職員には、高卒、短大卒、大卒、大学院卒など様々な学歴の者がいますが、学歴を根拠に差がつくことはなく、学閥で人が集まるような文化も無いのです。いろいろなキャリアを持ち、いろいろな才能を持った人が集まっている、フランクな組織風土が当行の強みでもあります。

人材について

銀行という商売は、何が財産かというと、それは人材です。銀行の業務は目には見えないマネーを扱う仕事ですが、サービスの内容は他行と大きな違いはなく同質性があります。その事業特性の中で、他行との決定的な差異化は難しいのです。その中で、最大の差異化をできる点は、人材です。「人材の品質=会社の品質」だと私は思っています。具体的には、当行の職員は「誠実」であること。経営理念に「公正堅実」とある通り、信用を旨とすることを大事にしたい。常に正直であり、色々なことを受け入れ、お客様をはじめ関わる人すべてに対して誠実であること。それによって得られる「信用」こそが、当行の財産です。そしてお客様とは長くお付き合いをする。したがって、人物としては、誠実さがベースであり、積極性やオープンな性格であること、努力する人、それが、当行が人材に求めるものです。

 

銀行ができることは多種多様で、企業や地域産業の役に立つために、広範な分野でコンサルティングができます。そこには対人能力、気づく力、高い感度が必要であり、様々な点で多様性が求められます。銀行の仕事は、様々な業種の方や色々な思いを持つ個人と接することができる、とても面白い仕事です。これを「楽しい」と思って、日々成長の場と思って仕事をするか。それとも、「仕事をさせられている」と思って過ごすか。仕事を面白いと感じることができるなら、毎日が成長の機会に恵まれた、素晴らしい日々になります。例えば日常の仕事の中に、北海道を代表する経営者に出会うようなチャンスがいくらでもあります。これは、その出会いから自分を高める機会に恵まれているということです。職員には、自分を高めるチャンスを日々与えられると思って仕事に臨んで欲しいものです。その経験の広がりが、自分自身の人間そのものや、自身のネットワークの厚みになります。個人として、銀行として地域で役割を果たすために、一人ひとりの成長と力量が問われているのです。

 

例えば、商社出身の方も中途採用者にいて、自治体のコンサルティングに入っています。銀行員と異なる発想が面白いですね。当行も昨年、北海道総合商事株式会社という商社を作り、ロシアビジネスなどに取り組んでいます。北海道には、地場の小回りが利く商社機能が無いので、その役割を持つ会社を設立したのです。当行は銀行法により出資の制限があり5%の出資にとどまりますが、その他道内企業が出資しており、道内企業の輸出、海外進出のお手伝いなどをしています。また、北海道ベンチャーキャピタル株式会社と組んでファンドを組成し、40数社に最終的に約25億円となる投資を進めているところです。本来の銀行の価値観は「全先回収する」こと。これに対してこのような投資ファンドでは「10件投資して、2~3件の上場で回収できればよし」とする。そういった銀行マンと異なる価値観を持つ方も必要となります。

 

そのほかにも、シリコンバレーのインテルでマーケティングの仕事をしていた方は、現在お客様のマーケティングのコンサルをしています。トヨタ自動車出身の技術者の方は、道内企業の工場効率化、業務改善のコンサルをしています。当行の採用では、「この人にこんなことを任せたら面白いんじゃないか」という発想があれば、何でもありです。

北海道の可能性について

特に、農業と観光には大きな可能性を感じています。観光については、可能性がありながら付加価値を付けきれていないということが大きな課題です。ここからは私の個人的な考えですが、北海道へのインバウンド来訪者は、2015年には200万人に達しています。5年前の60~70万人という数字から大幅に増加しました。これを2020年には500万人にすると聞きます。しかし、本当にそれでいいのか、と私は思います。数ではなく、付加価値で考えるべきではないかと。観光客一人当たりへの付加価値を最大にする。お金を払って質のいいサービスを受けられる、限られた人をサービスの対象にするのです。そして、サービスの対価として、堂々と適切なお金をいただいてもいいという意識を持つ。お金をきちんと落としてもらって、その代わり観光客個々人への満足感を上げるような観光サービスになっていく。質よりも数を重視した通過型になってしまうと、地域の活性化につながらないのではないでしょうか。その「質を高める」サービスを創造することに、当行は役立ちたいと思っています。

 

農業に関しても大いに可能性を感じています。私は今年3月にニュージーランドへ視察に行きました。ニュージーランドは北海道の約3倍の面積に420万人が暮らし、農作物を海外に輸出することで豊かな国になっています。一人当たりGDPは日本の1.2倍、経済成長率も年2%強です。北海道はこれを目指すべきではないか。ニュージーランドは、国外へモノを売ることを前提に、海外の厳しい環境で勝つことを常に考えています。北海道では、“モノはいいけど”厳しい環境で勝つことを考えていない。それではダメで、海外と戦うには競争力をつけなくてはならない。例えば、コストダウン、品質や味のマーケティング、生産量を上げるための品種改良、そういった問題意識をより強く持って仕事をしていけば、農業でもっと稼げるはずです。

 

今、北海道のGDPは約18兆円。その経済規模の中で2兆円の資金流出、いわゆる貿易赤字があります。寒い土地で化石燃料を多く消費するのがその理由の一つで、出ていくものが多い。それに対し、農業の力は獲得外貨を増やすことにつながります。ニュージーランドでは、観光資源も素晴らしいし、農業と結びついたワイナリーも良い。その光景は、まさに北海道の各地に重ねてみることができると思うのです。

編集後記

「地域とともに人口減少と戦う」「地域の経済が落ちていく逆回転と戦う」などインタビューの端々に笹原頭取の「闘魂」を感じました。弊社は20163月末に北海道銀行さんと提携させていただきましたが同社の意思決定の速さに驚いたことを記憶しています。地方創生というキーワードはもともと地域と共存する地方銀行のための言葉です。改めて地方銀行がその使命を強烈に意識する時代が来ていることを笹原頭取の意志の篭った言葉から感じ入った次第です。加えて人材に対する並々ならぬ期待感も強烈に感じました。やりがいを求めて行くなら今こそ地方銀行と思いました。

文:リージョナルスタイル認定コンサルタント 高岡 幸生

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