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大きな追い風を推進力に、よりダイナミックな挑戦を。

九電みらいエナジー株式会社
常務取締役 事業企画本部長 寺﨑 正勝

福岡 更新日:2021年5月19日

福岡市生まれ
1982年 九州電力株式会社 入社
2007年 経営企画室 地域戦略グループ長就任
2010年 社長室 副室長(経営政策担当)就任
2012年 株式会社九電ビジネスフロント 代表取締役社長就任
2014年 九電みらいエナジー株式会社 取締役 企画本部長就任
2020年 常務取締役 事業企画本部長就任
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

「脱炭素」の世界的な加速が大きな追い風に。

-前回、2019年12月のインタビュー(※)では、九電みらいエナジーに入社された経緯や事業戦略などをお伺いしました。それからコロナ禍に突入し、いろいろと変化が大きい1年だったと思いますが、いかがでしょうか。
(※)ページ下部『関連インタビュー』参照

本当に変化が大きい1年でしたね。新型コロナウイルスは、我々の日々の暮らしや社会のシステムを大きく変えてしまいました。そうした変化には不安もつきまとってきますが、「ピンチばかりではない、チャンスでもある」と前向きに捉えて事業に向き合っています。私たちが手掛けているエネルギー事業は、どれだけ世の中が変化しようとも、人々が生きている以上は必要不可欠なライフラインです。一瞬たりとも電気を止めることなく供給し続ける。その重要性と責任をあらためて感じています。

もう一つ最近の大きな変化としては、いわゆる「脱炭素」の動きが世界的に加速していることです。2020年10月には日本政府が「カーボンニュートラル(2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)」を宣言し、先の気候変動サミットでも各国が削減目標やロードマップを打ち出しています。これらの動きは、洋上風力をはじめとした再エネ電源開発の加速化を指向する私たちのビジョンと完全に一致しており、まさに追い風そのものです。

2014年の九電みらいエナジー設立当時、世の中は太陽光発電まっさかりでした。太陽光は再生可能エネルギーとして簡単で手っ取り早いのですが、日本は陸地の部分が少ないため、山や森林を切り拓いてソーラーパネルを設置しないといけません。しかしそれでは自然環境を損なうことになります。そこで私たちは「陸から海へ」と掲げて洋上風力発電事業に乗り出しました。そして2019年に「再エネ海域利用法」が制定されて以降は、法整備やインフラ整備も進み、洋上風力を主力電源化するという流れになっています。

北九州市の響灘で行っている洋上風力事業では、私たちを代表企業として計5社でコンソーシアムを組んで発電施設の建設計画を進めており、2022年度中の着工を目指しています。風力発電は風車やベアリング、電気系部品、ソフトウェアなど、1基あたり2万~3万点もの部品が必要となるため、それらを国内外から調達したり、事業として先行しているヨーロッパに学びながら運用シミュレーションを重ねて事業化を進めています。また日本には東北地方など風況が良いところがあるため、響灘で培っているノウハウ、技術、経験を活かしながら、さらに事業を拡大していこうと考えています。

まだまだ活用できるエネルギーが眠っている。

それからもう一つ、「未利用エネルギー」の活用も重要なテーマです。未利用エネルギーとは、工場の排ガスや蒸気から出る熱、ごみ焼却の排熱など、これまで利用されてこなかったエネルギーのことで、私たちが取り組んでいる「潮流発電」もそのひとつです。

潮流発電は大型の発電機(写真:模型)を海底に置き、潮の満ち引きで起こる海水の流れを利用して発電する方法で、現在は長崎県五島市の奈留瀬戸沖で実証実験を進めています。これは洋上風力発電のように主力電源となるような大規模な発電ではなく、消費地の近くで発電して供給していこうという“地産地消型”の発電です。

エネルギーというのは解が一つではないんですよね。主力電源になるようなものもあれば、地産地消に向いているものもある。大規模発電には洋上風力やバイオマス、小規模発電には潮流や未利用エネルギーの活用といったように「分散型電源」と言われる再生可能エネルギーの特性がますます重視されるようになるのではと思います。

足掛け5年。“アジア初の挑戦”が会社全体の大きな財産に。

-潮流発電というのはあまり聞き慣れませんが、どういった事業なのでしょうか?

潮流発電は、2015年にイギリスのスコットランドに勉強に行ったときに出会いました。当時日本では太陽光発電や陸上風力発電が主流で、社内の反応も“今ひとつ”だったのですが、何とか日本に持ち込めないかと考えました。というのも、九州は離島が多く、台風が頻繁に来ることから陸上風力発電が難しいエリアなのですが、潮流発電の場合は発電機が海底にあるので、風が吹こうが波が高かろうが影響を受けません。災害に強く、“地産地消型”で発電できる潮流発電は、うってつけだと考えたのです。

まだ日本では形になっていませんでしたから、国内外のメーカーやエンジニアリング企業にイチから掛け合い、2016年に実証実験のプロジェクトが始動しました。それからパートナー企業が破綻してしまったり、コロナ禍で海外の技術者が来日できなくなってしまうなど、様々な紆余曲折がありましたが、2021年1月、足掛け5年でようやく発電機を海底に沈めることができました。沈める瞬間は漁協の組合長と一緒にお神酒を注いで、海の神様に無事を祈願させて頂いたのですが、これまで何度も暗礁に乗り上げそうになった事業ですので、その瞬間はとても感慨深かったですね。スタッフたちも一丸となって逆境を乗り越えながら、一回りも二回りも成長してくれましたから、この経験は会社全体にとって大きな財産となりました。

この実証事業はアジアで初めての取り組みで、世界でもまだ5か所目くらいです。日本でも5kWとか10kWの実証実験は行われていたのですが、私たちの発電機は500kW。重さも1,000トンあります。再生可能エネルギーは「不安定」というイメージを持たれることがあり、確かに太陽光や風力は「日が照るか」「風が吹くか」という部分に左右されますし、それらは予測ができません。しかし潮流の場合は潮の干満の時間が分かっているので、それに合わせて発電を行うことができます。発電量を予測しながら計画的に電力を供給できるのは潮流発電の大きなメリットです。

また、奈留瀬戸は奈留島と久賀島という島に挟まれた海域なのですが、どちらの島にも世界遺産の教会や集落があります。発電機は水深40mの海底に沈めていますから、目に見えず、音も聞こえず、振動もありません。景観を損ねることなく、電力を供給できるシステムとして、島の方々も歓迎してくれています。

島の学生さんが名付けてくれた「なるミライ」「なるくらげ」。

コロナ禍でなければ島の皆さんを集めてイベントをしたかったのですが、それが叶わなかったので、何とか参画して頂きたいと思い、地元の小中高生に発電機の名前を付けてもらうことにしました。そして、奈留中学校の生徒さんが付けてくれた「なるミライ」という名前を採用しました。この名前には、「自然のエネルギーを使用した発電で奈留が今よりももっとすばらしく暮らしやすい未来になってほしい」という思いを込めてくれています。

また、公募でもう一つ多かったのが「なるくらげ」という名前です。発電するクラゲになぞらえて付けてくれたようで、私たちも気に入っていましたので、“せっかくなので”ということで、このプロジェクトのキャラクターを作り、それに「なるくらげ」と名付けることにしました。学校に訪問して命名証の授与もさせて頂き、生徒さんたちもとても喜んでくれました。

産業振興、国際協力、地球温暖化防止。ダイナミックな事業の先に待つ大きなやりがい

-公共工事である以上、地域の方々に喜んでもらうという部分はとても重要ですね。今回は五島でしたが、他にも実現できそうな場所はあるのですか?

あります。今回の実証実験から様々なデータを集め、国の方針も交えながら次なる計画を描こうとしているところです。未利用エネルギーの活用によって再生可能エネルギーを開発し、脱炭素化に貢献していく、これが私たちの事業の柱の一つです。それからもう一つ、産業振興にも貢献したいと考えています。日本は海に囲まれていますが、洋上風力発電の開発はこれからであり、工事に必要な船や港湾の整備も決して十分とは言えません。そういったインフラを整えたり、あるいは発電機のような機器は海外メーカーから部品調達することが少なくありませんが、それらを国内で調達するサプライチェーンを整えていくことができれば、地域の産業振興に繋がるのではと考えています。

また、世界を見ればインドネシアやフィリピンなど、日本よりもっと潮流のエリアが広い地域があり、実際にそれらの地域から関心も寄せられています。そうした国々ではそれほど大きな発電施設は必要なく、“潮流発電の施設ぐらいがちょうどいい”というところが少なくありません。日本が機器の製造拠点やメンテナンス拠点となって、「再生可能エネルギーのインフラ」ごと輸出できれば、ドメスティックな産業振興とグローバルな国際協力、そして地球温暖化防止に一度に貢献できるのではないか、というビジョンを描いています。


-ものすごくダイナミックですね。事業に携わっている方々もやりがいを感じやすいのではないでしょうか?

そうですね。最近中途入社された方も、入社してすぐ五島の潮流発電に携わっていて、今は頻繁に島に通いながら機器の調整などを担ってくれています。これまでのキャリアやスキルを活かしつつ、新しい分野に挑戦できると、とても生き生きと活躍してくれていますね。

私自身、文系出身で技術職としてのバックグラウンドはありませんが、こうした事業に携わっていますし、前回のインタビューでもお話しましたが、何より大切なのはチャレンジ精神だと思っています。事業がダイナミックであればあるほど、当然一筋縄ではいきません。苦境や逆境は少なくありませんが、その中でもあきらめないというハートのタフさが大切で、それに共感してくれる方がジョインしてくれています。だからこそ一丸となってチャレンジができますし、何かを成し遂げたときのやりがいも大きいんだと思います。

当社は九州電力からの出向社員とプロパー社員が混ざっていますから、冒頭でお話したような「一瞬たりとも電気を止めることなく供給し続ける」という電力会社の使命感やDNAを基盤にしつつ、「未開の分野を切り拓く」というパッションを持って事業を推進しています。一人ひとりが自分の仕事にこだわりを持って働ける、そして頑張った先にはきちんとやりがいや評価・報酬が待っている、そういった環境づくりを加速させていくのが今の私のテーマです。

与えられるのはチャンスと環境だけ。それをモノにするのは自分自身。

-現在求めているのはどんな人材でしょうか?

以前から引き続きではありますが「仕事を“志事”として取り組める人」、つまり自分の信念や志を持って、仕事のやりがい、おもしろみ、達成感といったものを自分自身で見つけていける方ですね。

会社や周囲から与えられるのはチャンスと環境だけ。それをモノにするのは自分自身です。せっかく仲間になって頂くのであれば、遠慮は必要ありません。やるからには、やり切ってほしいんです。もちろん、「どうしてもダメだ」ということもありますが、やり切ったという思いがあるのと無いのとでは、次の一歩の踏み出し方も全然違ってきますよね。これも前回のインタビューでお話しましたが、「チャンスをみんなで生かしていこう。何をやっても構わない。その代わり責任は私が取る」というメッセージは、今でも都度発信しています。自分の意志に従って、思い切り仕事にコミットできる、それが九電みらいエナジーだと思います。

編集後記

コンサルタント
植田 将嗣

九電みらいエナジーの寺﨑常務に約1年半ぶりにインタビューさせていただきました。九州電力グループの中で再生可能エネルギーの開発を専門に行う企業として2014年に設立された同社。コロナ禍によって事業環境が変化する中、世界的な脱炭素の流れを汲んで、以前にも増して追い風が吹いている、と力強く語る寺﨑常務がとても印象的でした。

現在、最も注力されているのが洋上風力発電システムとのことですが、特に今回伺った潮流発電「なるみらい」のプロジェクトについてのエピソードは、めったに接することのない貴重なお話でした。模型や実際の映像を拝見しながらご説明いただきましたが、その奥深さとダイナミックさに、エネルギーに関しては素人の私も思わず興奮するほどでした。

エネルギー分野の経験者の方はもちろん、成長分野で思い切りチャレンジしたいという意欲を持つ方がジョインされれば、ますます同社の成長が加速していくだろうと確信するインタビューとなりました。

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