リージョナルHERO

自分の強みを活かせる職場は故郷・岡山にあった。子育て環境を求めたUターンが開いた新しいキャリア。

東京でSEとして就職した岡山出身の水野祐介さん(仮名)にとって、その就職はゴールではなかった。知的財産権のスペシャリストである弁理士の仕事に惹かれ、システム開発の仕事とも密接に関わる知財の勉強に時間を費やした。やがて職場でも知的財産法の知識が認められて法務関係の部署に配属され、難関の弁理士試験にも合格。傍目には順調にキャリアを築いているように見えたが、大企業系列のICT企業で思うように自分の力を発揮できないもどかしさを感じてもいたという。そんな水野さんが「転職」を決断したのは、私生活の変化だった。第一子が生まれた頃から考えていたUターンが、第二子の誕生で現実味を帯びたのである。「自然の多い広々とした環境で子どもたちを育てたいが、やりたい仕事を諦めたくはない」岡山に知財関係の専門性を活かせる職場があるのか、不安を抱えながら始まった水野さんの転職活動は、意外なほどに早く実を結んだ。

- プロフィール株式会社両備システムズ 水野祐介さん(仮名) 34歳/関西大学卒
- 転職活動【転職回数】0回【転職期間】エントリーから内定まで111日間

転職前の職業・転職後の職業

職業 法務・知財 職業 法務・知財・監査
業界 ICT 業界 ICT
仕事内容 契約書のリーガルチェック、商標の問い合わせ対応など 仕事内容 契約書のリーガルチェック、知的財産法に関する問い合わせ対応など

1文系からSEとして就職し、働きながら弁理士資格を取得

現在のお仕事はどんな内容ですか?

両備システムズは岡山市に本社を置く情報サービスの会社です。私は監査室の監査法務グループに所属しており、契約書の査読や外部委託の発注書のリーガルチェックなどを行っています。私は弁理士という知的財産系の資格を持っており、知財関係の相談に乗ることもあるのですが、逆に言えば、これまでは知的財産系の法律の勉強を中心にやってきたので、民法など一般法の法域のことはそれほど詳しくありません。それでも、今の仕事では一般法の領域の契約書をチェックする必要もあり、新たに勉強しなければならないことばかり。大変ですが、そこが面白いところでもあります。

入社前のご経歴を教えてください。

岡山県で生まれ、大阪の大学で心理学を専攻しましたが、就職活動の際に考えていたのは「モノづくりに近いところで働きたい」ということでした。そこで選んだのが重工業メーカー系列のIT企業です。企業グループ全体で様々なモノづくりを行っていること、システムエンジニアは文系でも採用があったことが選択の理由でした。東京の本社勤務で、入社して2年間は業務系システム開発に携わりました。一方で、その頃から個人的に弁理士の仕事に興味を持っていました。弁理士というのは特許権や商標権など、いわゆる知的財産権に関わる仕事。いわばモノづくりの最先端と関われるわけです。それだけに、法律知識も技術分野全般への理解も必要なのですが、自分にとってはとても魅力的な職業でした。SEとして就職したのには、開発の現場に身を置けば技術系の素養を身につけられるのではないかという狙いもありました。そんな背景もあり法律の勉強をしていたことから、システム開発グループの中で契約管理業務やメンバーへの法務教育等に携わるようになりました。そうした中、当時の上司の理解もあって退勤後に予備校に通って勉強し、弁理士試験に合格。これが認められた形で知財管理・法務部門に配属となり、技術契約への助言や特許出願の中間処理対応などに取り組んでいました。「法的根拠を持ったアドバイス」を信念に、モノづくりをする人たちをサポートする仕事にやりがいを感じていました。前職の会社には8年半お世話になりました。

今回の転職のきっかけは?

就職した翌年に結婚したのですが、その5年後に第一子が誕生した時から、いずれは地元の岡山で子育てをしたいと思うようになりました。当時は千葉県の市川市に住んでいたのですが、周りに緑があるのは公園くらいで、しかも狭い所で凧揚げやサッカーをしている人がいたりして、子どもが走り回れるようなスペースはありませんでした。それに、通勤ラッシュはもちろんのこと、オフの日もベビーカーで子どもを連れて電車に乗る時などは一苦労。ひとことで言うと、窮屈でしたね(笑)。私は岡山の田舎で走り回って育ちましたから、そういう環境で育つ方が子どもには自然だと思いました。妻は私に比べるとずっと都会育ちですが、「子どもはのびのびと育てたい」という思いは同じでした。そして私が33歳の時に第二子が誕生。ここがUターンするタイミングだろうと決断しました。

転職活動はどのように進めましたか?

最初は有名な転職サイトを使って自分で探してみました。しかし、全国区のサイトはやはり東京や大阪の案件が中心。たまに岡山の求人があっても、そこに応募者が殺到するので狭き門。選考の途中までは行けても、なかなか最終段階には進めませんでした。私の場合は希望職種が特殊だったので、それもネックになりました。苦労して弁理士の資格を取ったので、知財の知識を生かせる法務系の職種を探したのですが、地方ではまだそうした職種の募集は少ないのが実情です。地方企業の場合、社内から法律相談があれば総務部の人が相談窓口になって弁護士につなぐというところが多く、社内に法務の体制を構築している企業は限られます。ある程度覚悟はしていましたが、やはり求人件数は少なかったですね。そんな中、「岡山 転職」で検索しているうちにライフサイズのサイトにたどりつき、岡山県内の求人件数が多かったので登録しました。担当の方とSkypeで面談し、自分の当時の状況と、「もっとこういうことがやりたい」「こうなりたい」という話をして、親身に聞いていただきました。その時に、現職である両備システムズの求人があるかもしれないという話をいただいたのです。本当にタイミングが良かったと思います。それから書類を揃えて提出し、岡山の本社に2度面接に伺って採用が決まりました。

今の会社に決めた理由は?

会社として今後法務関係に力を入れていきたいという方針があり、特に知的財産権を活用した戦略も考えたいということで、「ぜひ水野さんに力を発揮して欲しい」と言ってもらえたことが大きかったですね。また、両備システムズは岡山県内でもトップクラスの規模を持つICT系企業であり、AIやIoTなど最先端の分野にも関われる。先端のモノづくりに関わりたいとか、せっかく取得した資格を生かしたいとか、自分の思い描いていた仕事の仕方が岡山で実現できる、自分にとってまさにぴったりの会社だと思いました。

2子育て環境を考えて決めたUターンで、本当にやりたかった仕事と出会えた

転職してから今までを振り返っていかがですか?

2017年7月に入社して半年余りですが、まずは新しい会社のことを知り、職場に慣れるため、段階的に業務を覚えている状況です。両備システムズが一員となっている両備グループは大きな企業グループなので、全体の法務を担当する部署があり、弁護士の先生もいます。そこに出向する形で、弁護士の先生ともコミュニケーションを図りながら、システム関係の法律だけでなく、幅広く経験しながら吸収しています。現在でも知財に関する質問を受けて答えることもありますが、本格的に全社として知財に関する戦略に取り組んでいくのは2018年からになると思います。

転職によるプライベートの変化はありましたか?

都会での暮らしが長かったので、まだギャップに戸惑う部分はあるのですが、それなりに楽しくやっています。子供たちもだいぶ慣れたようです。広場へ行けば芝生の上を思い切り駆け回るので、追いかける大人の方が疲れてしまいます(笑)。自分自身も、満員電車から解放されたのが何より嬉しいです。以前は、体力のマックスを10とすると、出勤後は2くらい。こちらでは10のまま出勤できます(笑)。それと、やはりこちらは食べ物が美味しいですね。特に魚が美味しいので、市場に買いに行って自分でおろして食べたりしています。サワラの刺身なんてもう最高です!

転職してから、今後の課題だと思うことはありますか?

前職では知的財産権に関する分野だけをやっていればよかったのですが、これからは知財に関してもっと深く学んでいかなければいけないし、それ以外の一般的な法務の知識も新たに身につけていかなければやっていけません。つまり、勉強すべきことは山ほどあるということですね。

今回の転職をして良かったと思うことは?

現在の職場では、自分のやりたいことをダイレクトに聞いてもらえる。そこがノンストレスだなと感じます。前職では「こういうことがやりたいんです。会社のためにもやるべきだと思います」と提案しても、そんなことをやる人員もいないし、そんなことをして本当にお金になるの?みたいな反応だったのです。今は、私のやりたいことと会社の方針とが合致しているからでしょうか、「それは絶対にやらなければ」となるので仕事がしやすいですね。岡山へのUターンの動機だった子育て環境の点だけでなく、仕事の面でも理想に近い転職ができたと思っています。

転職を考えている人にアドバイスをお願いします。

自分のやりたいことに素直になってみるのも大切なのではないかということですね。そして、やりたいことが田舎にあるなら、Uターンして叶えるのも一つの方法だとも思います。私の場合は知的財産権に関する知識と経験を活かしたいと思い、これから知財関係を強化していこうとする故郷の会社と出会うことができました。前職のままでいたら既存の枠組みの中でしかできなかったことも、新しい職場では枠組み作りから任せてもらえる可能性があるのです。身につけた専門性を違った形で活かしたいという人には、地方への転職も選択肢の一つになり得るのではないかと思います。難しいと諦める前に、まずは探してみることではないでしょうか。


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株式会社ライフサイズ 瀬川 泰明

水野さんは、自ら行動をすることで自分自身のキャリアを切り拓いてきた方です。「次の職場では〇〇がしたい」「〇〇を変えたい」。転職活動をする方の多くがそのような希望を持っていると思いますが、ではそれを実現するために、現職で与えられている仕事プラス何に取り組んできたのかを聞いた時に、それに明確に答えられる方は多くはありません。仕事における興味や好奇心、場合によっては違和感をそのままにせず、水野さんのように一歩踏み出して行動できる人は本当に強いと思います。先日、ランチをしながら近況を伺ったのですが、「新たに勉強しないといけないことがたくさんある」と言いながらも、どこか楽しそうで、きっとこれからもこれまでどおり行動をしてご自身のキャリアを切り拓いていくだろうと確信しました。

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