採用が経営を変えた瞬間 代表取締役社長 市川浩透氏

まず組織との信頼関係を築くこと
これが中途採用成功の要諦である

常盤工業株式会社 / 代表取締役社長 市川浩透

Vol.12

常盤工業株式会社
代表取締役社長 市川浩透

静岡

1964年2月13日生まれ(52歳)
浜松市出身。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
1988年、リクルートに入社し、ビル事業部にて法人営業を担当。
1993年、祖父が創業し、父親が二代目社長を務めていた常盤工業に入社。2006年、同社代表取締役社長に就任。

将来、経営者になるための実力を養うために、リクルートに入社

当社は、住宅、ビル、工場、店舗などの各種建築物や土木工事の設計・施工を手掛ける、総合建設会社です。創業以来、地元・浜松エリアを中心に展開しています。そして、私は、経歴の通り、創業家出身の三代目社長です。小さい頃から「将来の三代目は自分だ」という意識があり、そのため、大学では建築学を専攻しました。

 

リクルートでは、「ビル事業部」という部署で約5年間、オフィスビルの設計企画等を担当しました。入社時に、自ら同事業部を希望しました。それは、リクルートの中では、最も建設業と関連がある部署であり、また、経営戦略部門として位置づけられていたからです。ビル事業部は、その1980年代当時のリクルートの資産戦略「自社ビルの所有を推進し、他社にも貸し出す」を担っていました。当時のリクルートは、会社自体が若く、社員の平均年齢も20代半ばぐらいで、そして、会社としても創業志向やキャリア志向の強い人材を求めていたので、どんどん仕事を任せてもらえました。そのため、経営やマーケティングの手法を学べ、また、企業経営者の方々と商談させていただくことも多く、とても勉強になりました。

「会社を変えたい」という想いが裏目に出て、社内で孤立状態に

「この旧態依然の会社を刷新しなければ」……それが当社に入社して感じたことです。当時の当社は、すべてがリクルート時代とまったく違いました。例えば、リクルートのような情報サービス業の企業では、スピードが命です。そのため、リクルート時代は、常に業務をスピーディーかつ愚直に遂行することが求められました。一方、当時の当社は、コピー用紙の無駄使いを防ぐため、コピーを1枚取るにも、許可を要し、コピー機専用の部屋の鍵を開けてようやくコピーができる状態でした。また、リクルート時代は、新規のお客様のところにまずは飛び込み、そこでお客様のニーズを掘り起こす、提案営業をしていました。一方、当時の当社では、営業に出ても、「ご用命があれば、よろしくお願いします」と一言添えて名刺を渡すだけでした。

 

そこで、当時の私は、入社一年も経たないうちに、「リクルートのようなやり方に変えれば、この会社がもっと良くなるはずだ」という想いから、先輩や上司に断りなく、地元の土地所有者の方々にマンションやビルの建築を提案し始めました。さらに、一年くらいで数億円の仕事を受注できたため、私一人で提案営業をするのではなく、事業として提案営業ができれば、もっと受注を増やせると考えました。そこで、建設業の中で最も提案営業に取組みやすい戸建住宅建築専門の「住宅事業部」を新たに起ち上げ、起ち上げ3年目には、十数億円の受注額を記録する成長を遂げました。しかし、社内では、「後継者が、会社のことをろくに理解もせず好き勝手やっている」と捉えられていたようです。その結果、気がつくと、私はすっかり社内で孤立した状態になってしまいました。

信頼関係づくりに務めた結果、少しずつ社内改革ができるように

そんな孤立状態になってしまった時に、リクルート時代のある先輩から言われたこと……「地元に戻ったら、まず、一緒に働く人たちとの信頼関係づくりから始めなくちゃダメだぞ」「とにかく、現場の人たちと一緒に酒を酌み交わせ」……をふと思い出しました。当時の私には、「この会社を改善したいと思っている自分に協力しない既存社員の人たちの方が間違っている」という気持ちがあったのですが、先輩の言葉を思い出したことがきっかけで、その気持ちが自分のおごりであると同時に、「信頼関係なくして周囲の協力は得られないし、この会社を変えることもできない」ということに気がつきました。

 

それ以来、信頼関係づくりのために、自分なりの努力をするようになりました。例えば、

 

・朝早く一番に出社し、社内の誰よりも働く。
・肩書きに関係なく、社員の話しに耳を傾ける。
・社内の懇親会に積極的に参加する。
・朝礼では、経営やマーケティングの話題ではなく、当社の現場に即した話題を話す。

・人が嫌がる仕事、例えばクレーム対応などに率先して対応する。

 

など、些細なことではありますが、できることから取り組み始め、今現在も続けています。このように、信頼関係づくりに務めた結果、少しずつ、具体的な社内改革に着手できるようになりました。

人事制度を見直して、個人の成果が給与に反映される仕組みに

これまで様々な社内改革に着手してきましたが、その中でも、一番大きな改革は人事制度の見直しです。役員就任後、私は、当社の労働組合との団体交渉を担当しました。その当時、不景気の影響で、当社を含めた建設業界の企業の多くが赤字続きでした。そのため、ベースアップゼロや賞与額の削減について労働組合と団体交渉をしていました。しかし、会社側も、組合側も、双方、多大な労力と時間をかけた割には、あまり成果のない団体交渉を続けていました。

 

そのことがきっかけで、会社も、社員も、双方が納得できる人事制度が策定できれば、これ以上、誰も得をしない不毛な団体交渉を続けずに済むと考えるようになりました。そこで、人事制度そのものの見直しを組合側に提案し、また、その見直しの意図も組合側に伝えたところ、大いに賛同してくれ、社員や外部の専門家などもメンバーに含めた、新人事制度の策定プロジェクトを起ち上げました。

 

その結果、それまでの仕組み……仕事の成果に関わらず、残業時間や勤務年数が長ければ長い人ほど、多くの給与を得られる……から、個人の仕事の成果や評価が給与に反映され、また会社全体の業績が賞与に反映される仕組みに変えることができました。それによって、以前より納得性の高い給与制度になり、社員個々のモチベーションも上がり、組合との関係も、不毛な団体交渉が無くなった代わりに、毎月の定期的な懇談会により建設的な意見交換ができるように改善しました。

考え方のベクトルを合わせ全従業員の物心両面の幸福を実現する

当社の経営目的は、「全従業員の物心両面の幸福」です。その実現のためには、信頼関係を築いた上で、取り組むべきことが2つあると考えています。その一つは、組織に新しい風を運んでくれる、経験豊富、かつ優秀な人材を中途採用することです。また、もう一つは、考え方のベクトルをそろえるためのフィロソフィ(哲学・物の見方)の共有です。

 

当社は、今まで事業拡大のたびに即戦力人材を中途採用し、その人材がしっかり当社に定着しているため、現在、管理職の半数以上が中途採用者です。今後も、会社と人が成長を続けるために、積極的に優秀な人材を中途採用したいと考えています。また、中途採用者の力を当社の成長に活かすには、転職者と当社、双方の経験や知識を組織の成果に転化できる取組みを考え続けることが大切だと思います。その取組みの一つが、フィロソフィの共有です。

 

当社には、社員が持つべき基本的な考え方を31項目に整理した「トキワ・フィロソフィ」というものがあります。内容は「地味な努力を積み重ねる」「仲間の為に尽くす」「試練を歓迎する」など非常にプリミティブなのですが、転職者がこの「トキワ・フィロソフィ」に同意し、既存社員とベクトルを合わせ、組織と信頼関係を築くことが出来るかどうかが、自らの経験や知識を組織の成果に転嫁できる鍵だと思います。「まず組織との信頼関係を築くこと これが中途採用成功の要諦である」このことを、はっきり申し上げておきたいと思います。

 

なお、今まで当社の経営トップのポジションは、創業家の世襲制でしたが、これを見直し、これからは社員の中から次の経営者や役員陣を抜擢していきたいと考えています。「将来の社長を目指したい!」そういう意欲ある人材にぜひ応募してもらいたいと思っています。また、その意欲にお応えすべく、思う存分実力を発揮できる環境を用意して参ります。

編集後記

市川社長には多くの方を採用して頂いております。選考の過程で接する機会が多く、日頃からお話の内容が全くブレない、信念をお持ちの方だと思っておりましたが、今回の取材でも、本気で経営目的である『全従業員の物心両面の幸せを実現する』を達成するために仕事をしていらっしゃる経営者だと再認識いたしました。また、市川社長ご自身の、孤立状態から社内での関係構築を経て改革に至るエピソードは、Uターン転職者にとって大変有益なアドバイスになりえる、と感じました。合理性と泥臭さを兼ね備えた、市川社長のお人柄・常盤工業の社風のルーツの一つを垣間見ることができたお話でした。

文:リージョナルスタイル認定コンサルタント 高木 悟

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